短編
□バレンタイン
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シャカシャカシャカシャカ……
乙女のための特別な日。夜遅くまで働き、そしてバイトから帰って、チョコを作る。
今日は徹夜覚悟だ。
『なんで日本に生まれたんだろ…外国だと、男の子から貰えるのに…』
そんなことを何やら、ブツブツと言いながらシャカシャカと一生懸命、何かを混ぜる。
「姉上…一体何を作られているので御座るか?」
お風呂上がりの弟が首にタオルをかけてキッチンまでやってくる。
『ん?バレンタインチョコを作ってるのよ』
「あっ…姉上が、菓子を…?」
『なぁに?何か文句でもあるの?ゆ・き・む・ら!!』
ビローンとよく伸びるほっぺを思いっきりひねる馨。
「ふぁ…ふぁりまふぇふ!!」(※あ…ありませぬ!!)
『よろしい』
その言葉を聞いてパッと手を離す。
「ですが、姉上…一体誰に差し上げるつもりでいるので御座るか?」
『ん〜?アンタも知ってるでしょ。眼帯しててやたら女子に人気のある…』
「政宗殿…で御座るか?」
『せ〜いかい!!』
泡立て器をビシッと勢いよく幸村に指し、そしてその勢いで泡立て器についていた生クリームが飛び、幸村の顔にベッタリとついてしまった。
『あっ』
「…………」
『ごーめんごめん。つい…』
「ついじゃありませぬぞ。今、風呂から上がってきたばかりなのに…」
そう言いながら、首にかけているタオルでクリームを拭き取る。
『だから、ごめんって!!幸村の分もちゃあんと作ってるからさ!!許して。ねっ???』
「はぁ…今回だけですぞ。今度似たような真似をされたら、某の紅蓮脚が飛んで参りますぞ」
『うっ…それは勘弁。次からは気をつけまぁす』
そう言ってまた生クリームをシャカシャカと混ぜる。
「しかし…今まで台所に立ったことがない姉上が菓子作りとは…政宗殿のことが本当に好いておられるのですな」
ガシャン!!
泡立て器を落とす音。
幸村の「政宗に好いている」の言葉で反応したらしい。
『すっ…好いてなんかいないっ///!!たっ…ただ、親友としてだし、一つも貰えなかったら可哀想だなぁ〜って思ったからっ…///!!』
「しかし、政宗殿はモテるので御座ろう?一つも貰えないことないのでは…?」
『っ///!?』
幸村の前に手のひらを出し、そして勢いよく頬をビターン!!と叩く。
「っ?!」
『馬鹿おっしゃい///!!そんなこと…分かってるわよ///!!』
「何も本気で叩かなくてもよいでは御座らんか…」