短編
□吸血鬼
1ページ/5ページ
ジュル…
ドサッ
ああ、まだ足りない…。
でも、人間は殺せない。だって私は、人間が大好きだから――。
******
「かーのじょ♪」
『……』
「かわいいね〜♪今から遊びに行かない?」
『……今、俺に近づかないほうがいいぜ』
「「?」」
馨は、冷たくそう言い放つ。
そして、男二人から去っていく。
『(くそっ…血が…血が足りない…)』
「馨殿?」
苦しんでいると、聞き覚えのある声が、かかってきた。
『真田、か』
クラスメートの、真田幸村だった。
「やはり馨殿!!如何なされた?!顔色が優れぬぞ!!」
『…気にするな。お前には関係ない』
「しかし、顔色が…」
「どうした?こんなとこでしゃがみこんじまってよ」
馨のもとにもう一人…伊達政宗が姿を現した。
「馨殿の様子が…顔色が優れない様子故、自宅までお送りした方がよろしいかと…」
「なるほど」
政宗はチラッと馨の方をみては、少し考えこむ。
そして、手をスッと差し出す。
「俺が送ってやる。真田、アンタ部活があんだろ?早く部活に行けよ」
「だが、馨殿が心配で…」
「Ah〜?俺が頼りねぇっていうのかよ?」
「お任せいたす!!政宗殿おおお!!」
幸村は政宗にそう言い残すと、猛ダッシュで学校へと向かっていった。
ダッシュをしなければ部活に遅れてしまうからであろう。
「Are you ok?」
『あっ…大丈夫…』
「……血、足りねえんじゃねぇのか?」
『なっ…何でそれをっ?!』
そう叫んで立ち上がろうとすると、フラッと立ちくらみをする。
倒れそうになっている馨をとっさに抱きかかえる政宗。
「大丈夫じゃなさそうだな…この調子だと」
『ごっ…ごめんなさい』
「謝るこたぁねぇよ」
『あっ…あと』
「ん?」
『おろしてくれると嬉しい…です』
「………」
今の馨は、お姫様抱っこをされている状態。
政宗と馨を見る通りすがりの人たちは、顔を真っ赤にさせたり、羨ましそうに見ながら通りすがる人たちが多数いた。
『まっ…政宗…』
「No、おろさねぇよ」
『えっ?!ちょっ…おろしてくれないと、私が困るんですけどっ!!』
「Ah?何が困るって言うんだ?」
『…恥ずかしすぎて死にそう…///』