短編
□吸血鬼
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馨は、政宗に見られないよう、俯き顔を隠す。
「照れてんのか?」
『照れてなんか…!!』
「政宗様、ここにおられましたか」
「小十郎か」
「馨?どうしたんだ?顔色が悪いぞ?」
「血が足りないんだと」
「人間の血、満足にまた吸えなかったのか」
『……うん』
「純血のvampireでQueenまでのやつが、人間の血を吸わねえってのはたいしたもんだ」
『………』
純血の吸血鬼は大抵、人間を嫌う。
だから、自分の食料として血を吸うのだ。
だが、馨は違った。
純血で女王の馨は、人間が大好きで人間を殺したくないのだ。
だから、珍しい。
だが、女王である馨が人間好きだと同じ吸血鬼からは毛嫌いされたりしているのだ。
だから、馨は吸血鬼の世界から少し離れ、人間界に足をとどめることにしたのだ。
「…vampireの世界に戻れば、血をくれるぜ?一度、腹を満たしに俺と戻るか?」
政宗の誘いに馨はブンブンと首を横に振る。
「…戻るのが怖いか?」
『……うん』
「…大丈夫だ、俺も一緒にいる。俺が、馨を守ってやる。だから、一緒に一度戻ろう」
『政宗…』
政宗は馨の身を案じて、馨を吸血鬼の世界へと連れ帰っていくのだった。
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「おい…」
「あれ、クイーンだよな?」
「今更何しに戻ってきたってんだ?」
「キングも、クイーンを連れ帰るとは…一体何をお考えのつもりだ?」
『………』
自分の故郷に帰るなり、ヒソヒソとクイーンである馨の悪口が飛んでくる。
だが、馨は慣れたせいか…何とも思わなかった。
「気にすんじゃねぇぞ、馨」
『うん、大丈夫…気にしてないから』
ニコッと少し弱気な笑顔を見せる。
「…小十郎」
「はっ、馨様の後ろはこの小十郎にお任せを」
「任せたぜ」
「御意」
小十郎は、そう言うと馨の後ろへとまわり、ガッチリガードをする。
『政宗、私といれば貴方だって一緒に非難の嵐を受けることになるわ。だから…』
「Ha!!ああやって陰からしか物言えないやつに何言われたって痛くもかゆくもねぇよ」
「「?!」」
『政宗?!』
政宗は先ほど馨の悪口をヒソヒソと言っていた者に聞こえるように大きめの声で話す。
「安心しな。馨は俺が守ってやる」