短編集

□はっぴーはろうぃん!
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「くくっ」

ゆうは期限良さ気に歩いていた


「誰かいねーかな」


ラウンジに向かおうとエレベーターに乗ろうとしたゆうは開いたエレベーターの中に神崎仁の姿を見つけ、僅かに眉を寄せた

「乗らないのか?」

「の、のります・・・」

舌打ちしたい気分になった
正直、学校での自分はハロウィンで仮装するようなキャラではない


「俺には聞かないのか・・・?」

突然の仁のことばにゆうは一度何を言われたのか理解できなかった


「えっ?・・・あっ、えーっと・・・Trick or treat・・・?」

笑顔で自分を見つめる仁に心中では訝しがりながらも、お決まりのセリフを口にした

「部屋にはあるんだ。寄ってくか?」

「えーっと、じゃあ・・・お願いします・・・」

一度一階についたエレベーターはすぐに生徒会フロアの最上階まで駆け上がった


ポーン

微妙な沈黙を保ったまま2人は仁の部屋へと向かった

「入れ」

「お、おじゃまします」


仁に促されて部屋へと足を進めたゆうは仁に言われるがままソファに座った

「ホッとココアでいいか?」

いえ、ブラックで、とも言えず当たり障りなくお構いなく、と言葉を返したゆうのとなりへと腰を降ろした仁はコーヒーカップを二つ机に置くとチョコレートを差し出した

「Happy halloween」

「あ、ありがとうございます」


目の前の誰もいないソファを一瞥したゆうは小さくため息をついた


差し出されたチョコレートを口に含むゆう

甘さを控えたそのチョコは思うよりもおいしく、リキュールが入っているのか少しの苦味と濃厚なカカオの香りにゆうは頬を緩めた


「うまいか?」

「はい、とても!」

「そうか。まだあるぞ」

「ありがとうのざいます!」

満面の笑みを返すゆうに仁も少しばかり頬を緩めると少しトイレに行ってくると席を立ち上がった


部屋の持ち主がいないせいか、妙にそわそわとし出す自分自身にゆうは呆れた

あいつが戻ったらさっさと帰ろう


部屋に戻ってきた仁に自分はもう帰ろうと席を立ち上がろうとしたゆうはそこで始めて自らの異変に気付いた


力が入らねぇ


「Trick or treat」

「え?・・・あ、あの僕は何も・・・すいません」

「菓子がないならイタズラしても良いんだよな?」

「か、会長!どうして・・・!」

ニヤニヤと近づく仁にそこで初めて自分の失態に気付いた

くそっ!

チョコに含まれていたであろう媚薬により潤む目元に、意図的に涙を流す

「悪い・・・だがこうでもしないとお前が手に入らない」


自分を撫でる大きな手が気持ち良くて頬を擦り寄せる

「今日は付き合ってもらうからな」


深い口付けを施した仁にゆうは薬のせいだとはやる気持ちに目を背け、流れに身を任せた
















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