首無

□以心伝心
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ご飯を食べて、お風呂に入って、テレビを見ながらくだらない話をして。かれこれ1時間くらいこうして二人、ソファに座っている。

「へー、幽君今度このドラマ出るんだ。」
「ああ、連絡あった」

「そう」

 そのくらい前もって教えてくれても良いじゃないかと不満に思う。確かに最近良くテレビやら映画やらで売れまくっている弟の情報なんて多過ぎて一々報告するまでもないと思っているのかも知れないが、彼が知っていて俺が知らない、そんな少しのことに俺は溝を感じて不安になる。
彼の少ない口数に俺がいつもどれだけヤキモキしているかなんて考えたことも無いのだろう。ただでさえ感情表現のバリエーションが少なく、何を考えているのか良くわからないというのに。
ため息をついて顔を盗み見ようとすると目がバッチリあってしまい、焦る。

「…なに、……っちょ」

 いきなり二の腕を捕まれて引き寄せられた。そのまま腕を掴んでいた手は背中に回されて慰めるようにさすられる。本当に何なんだ。誰のせいで落ち込んでると思ってるんだ。

「…離して」

 駄目元で胸を押しやるがびくともしない。分かってたけど。
静ちゃんはお構いなしに首に顔を埋めてくる。すんすん息を吸われてなんだか妙な気分になってくる。

「ホント、何なんだよ!」

 部屋を覆い始めた雰囲気に呑まれまいと声を張るが、今は何をやっても無意味らしい。服をまさぐりはじめる手に、俺は抵抗を諦めた。





「…っん、……はぁ」

 電気も付けっぱなし、テレビも付けっぱなしの色気もへったくれもない部屋に水音が響く。吸い付くようなキスを体中に落とされて頭はもうぐちゃぐちゃだ。跡がついたらどうする気だ、とか言わなくてはいけないことはたくさんあるのに何も考えられなくなっていく。

「…っシズちゃ……でん、き…」

 それだけ言うとあからさまに嫌な顔をされた。いや、静ちゃんは知らないだろうけど普通こういうときは消すんだよ?知らないだろうけどね。それにさっきから眩しくて目がシバシバする。

「おい、臨也。腰上げろ」

ベルトに手をかけてスボンを脱がせようとする静ちゃんを制して自分ですると言うと大人しくどいてくれた。これは別に自分で脱いで見せてやろうだとか、そういうことでしてるんじゃない。静ちゃんにさせると2回に一回はベルトかズボンの金具が壊れるのだ。自分のはどうしてるんだと聞いたら普通に出来ると言うので悪意があるんじゃないかと思ったがそうでも無いらしい。
俺がそうしている間に静ちゃんがテレビを切ってくれて部屋が静かになっていた。
流石にバラエティーは嫌だったのか、と少し笑えた。

「何だ、にやにやしやがって」

「ごめんごめん、…良いよ」

深いキスを仕掛けられて、再び押し倒された。角度を変えて何度もキスを繰り返される。

「ん…っん…」

腕を首に回すと笑われた。

「どうした。何か今日はやけに、」

「有りがちなこと言わないでくれるかな」

「可愛くねぇな」

「ハハハ、どうも」

大きな掌が身体をなぞっていく。胸の辺りを執拗にゆっくりした手つきで撫でられる。ムズムズした快感が背中を伝い、身をよじると胸の飾りをベロリと舐められた。

「…う、ぁ…」

すかさず手の甲で口を押さえても、そんなことが許してもらえる訳も無く、腕をソファに押し付けられてしまった。こういうところが本当に悪趣味だ。誰が男の喘ぎ声なんか聞きたいものか。少なくとも俺は自分のそんな声聞きたくないね。歯を噛み締めるも舌の先や指の腹で無遠慮に飾りをいじくられれば歯の隙間から声が漏れる。どうだと言わんばかりに静ちゃんは本当にいい顔で笑う。ああムカつく。こういうときばっか分かり安くても困るんだよ。
擦り寄せた内股に手を滑らされて、来るであろう快感に目を閉じた。


「なんだ、もう感じてんのか」

「…ん…、力強いんだよ!……っぁぁ…」

中心に指を絡ませられ、ゆるゆると扱かれる。力の全く入っていないそれに腰の浮くような焦れったさを覚える。

「…っな、…も……それやめてっ…ん……はぁ」

「ったく、どっちだ面倒くせーな」

ぐりぐりと先端を指で弄られ、足が空を蹴る。先走りが身体の表面を流れていく。

「手間まだイクなよ。…足開け」

耳元で囁かれた声に身震いがした。


「っは、ぁ…ああ、…ん、っあ」

前立腺を擦られるたびに勝手に口から声が出ていく。きもちいい、きもちいいとそれしか考えられなくて、もう自分の声も気にならない。それどころかこの声さえも自分を煽り、淫らな気分を増長させていく。淫乱だと思われないだろうか、と頭をよぎる間抜けな不安はいつも事後には忘れていて、からなずこの瞬間に思い出すのだ。

「可愛いな」

「ん、…っは、どっちだよ」

にやりと笑った静ちゃんに片方の口の端を上げて応えた。皮肉かな、この瞬間の俺達は、完全に意志の疎通ができている。





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