首無
□12月の憂鬱
1ページ/4ページ
―緊急事態、今すぐ来い。
件名の無いメールの中身はこれだった。
文面を見たとたん軽い音をたてて壊れた携帯の修理代はどこに請求すりゃ良いんだ。
「臨也ァアア!」
12月の憂鬱
何の嫌がらせだ。今すぐ来いってなんだ。人にものを頼む態度じゃねえよなぁ。そもそもなんであの野郎アドレス知ってやがんだ。よし殺す
数秒で出た答えに、奴のマンションに向かおうとするとすでに足は行く先に向かっていた。
「殺される覚悟は出来てんだろうなあ、臨也くんよぉ」
玄関の扉を力付くで開けようとドアノブを引くと、鍵か掛かっていなかったらしく勢いよく開いた扉に危うくぶつかりそうになった。
「あ゛?」
「ああ、静ちゃん、やっときたか。案外遅かったね。」
部屋の中からいつもとなんら変わらない神経を逆なでするような声がした。やっぱ嫌がらせじゃねえか。
「おい手前どういうつもりだ。つかなんで俺のアドレス知ってやがる。」
「いいから上がんなよ。緊急事態だって言っただろ?」
そう言ってバスタオルを投げられ、自分の体に雪が積もっていることに気づいた。本気で何考えてやがる。こいつが考えることだ、ろくでもないことには違いないだろうが。不信な目を向けていると、早く、と急かされた。
奥に進むといかにもクリスマスなメニューが並べられたテーブルの椅子に臨也が座っていた。
その光景があまりに似つかわしくなくてしばらく呆然としているとワインボトルを差し出された。
「コルク開けてよ。」
「は?」
「何回も言わせないでよ。緊急事態なんだってば」
そう言われて何を言おうてしているのか一瞬で理解した。あれか、シャンパンの瓶の蓋が開かなかったから連絡をしたと・・・
「帰る」
「ちょ、ちょっと静ちゃん待ってよ!困るってば。」