長編小説

□Beorc=18=
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走らなきゃ、今よりも早く!!


ハヤク、ハヤク―…。





真っ暗闇の中に赤いランプが光る
煩いベルがジリジリとなる
体感温度は氷点下だ
なのに裸足で走る


右手には自分より少しデカい手を握り締めて走ってる




早く
早く早く早く!!



気持ちばかり焦って倒れた




……ぃな!……め!!


手を一緒に走ってた人に差し出したら世界が一変した






色様々の小さな華が咲き誇る
小川が流れてて
空気が澄んでる

華を踏まないように歩こうと思うと、地面より浮いて歩けた
小川を辿って行くと
とても綺麗な湖に着いた。




水が綺麗過ぎて底が見える
まるで水なんかないようだ…
触ろうと手を伸ばすと沢山の異様な光のシャボン玉が出て来た







何だろう
これは…?







『ダメだよ触れたら』


人の声がした
辺りを見回しても誰もいない



『…こっち』





湖の中央に木がはえていたそこにいたのは




「……ゅ…ちゃ…」










「閨!!学校だよ!!!」

ん!ハ!!」




僕は誰かに叩き起こされた。









「閨は毎回遅いな、食堂もギリギリじゃん」

いつも呆れて起こしてくれたのは黒髪おかっぱ頭の優梛ちゃん
この人がいないと僕は絶対遅刻魔だろうな


「ぇ〜僕より遅い人いるよ〜」


ブツブツ文句言うと頭をコツンと叩かれた
この叩き方と僕の頭にフワリと触れる長い髪でわかるのが皐月ちゃん

「閨、だらしない口のまわり汚れてる」


やっぱり正解!!


「ぃや〜…とってよぉ」

「甘やかしません!!」

「ちぇ〜って!!もうこんな時間!あぁ〜まだカツ丼しか食べてないよ;;」



僕は焦りながらご飯を食べ始めた



「先に行ってるからな」

「遅刻するなよ閨!!」



手を振りながら歩き始めた優梛ちゃんと皐月ちゃんに僕も手を振る



「お〜い、食堂閉めるぞって閨、まだいるのかよ」

「ちょ、まっッブ!ハッ!」

「Σぅわぁ、きたなっ!!」

見回りに来た彗に僕はご飯粒を飛ばしてしまった



「お前…叩かれたたいのか?」

あきらかに黒いオーラを出しながら僕の頭を掴む彗が物凄く怖かった


「以後気をつけますぅ」

「はぁ…」

ぱっと話すのが珍しく
彗は少し躊躇いながら僕に頼み事をしてきた








「七海がな」

「ぅん」

「今日学校にくる奴の案内人を閨にして欲しいんだって」

「へ〜…いつも彗がやってんじゃん、なんで僕なの?」

「理由は直接七海に聞いてくれ、コレがパンフレットじゃ頼んだ」



ひらひらと手を振る彗は何故が背中が重そうに見えた


そういえば名前は?


「ねぇ!彗、転校生の名前は?」





顔は見せずに彗は言った






「辻 悠仁」






何故かその声は今までに聞いた事が無いほど震えていた
辻 悠仁?
聞いた事が有るような無いような…
まぁ、いいや!!


めちゃくちゃ広い二人部屋を一人で使ってたから相部屋になる人がいて嬉しい!!





「じゃ、行ってきまーす!!」



寮を飛び出し学校へと走り始めた










僕はこの学校から出た事がない
高い塀に囲まれてて、外部の人達と接触なんてしたことない


この学校の施設でずっと育ってきたんだ
なんでかって言うと

僕は特殊な血液の持ち主
その血液を巡って実験道具にする研究者達に狙われない為にこの施設、学校に居るんだ


だからとてつもなくデカい学校でセキリティとか物凄くしっかりしてる









だから
この塀の中でしか四季を感じれない





あれ

今って…冬だよね?





「狂い咲きの桜が開花してる!」




狂い咲きの桜が咲くと今までにない出来事が起こるって七海ちゃんから聞いた



考えが過ぎった途端に
激しい突風と砂埃が舞った


僕は両腕で顔を防ぎ耐えた
風が止むと何かの気配がしたから服の中からシャープペンシルを三本取り出し力任せに投げつけた




『……ッ…』

「誰!?」




目を開けると
狂い咲きの桜が幻想的に散っている


その下で出会ったのは






ウルフカットの澄んだ黒髪
額の中央には縦に生々しく縫い糸が見える
眼は瞳が無いけど見ただけで飲み込まれそうな紅色
血色が悪い肌
細身だけど力がありそうな雰囲気
服装は男物を着ていて白のズボンが黒いベルトでくるくる巻かれていた





そこまではみんな出来るかもしれない

だけど、絶対真似が出来ないと確信したのが僕が投げつけたシャープペンシルが一つだけ刺さってる手から出てる血液







僕の見間違いじゃなければこの人から流れ出てる血液が黒色





すぐにわかった



「辻 悠仁さん?」

『………』




笑った顔は何かの予兆に見えた










…ハジマリ…
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