∞手塚長編U∞

□4話
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桃「ぃやぁーっ美味かった!」
菊「いつもと違う環境だからか、格別に美味しかったにゃ〜」
河「いや、多分、本当にいい魚だったよ。東京じゃ滅多にお目にかかれないような、高級なものかもしれない」
海「まじっすか?」
越「河村先輩がそういうなら、そうなんじゃないっすか」


俺たちが各々貴重な食事をしている最中も、彼女はずっと俺たちを見ていた。
最初は見張っているのだと思った。
会った時から、ずっと俺たちに怯えていたのだから、俺たちが不審な動きをしないようにそうなのだろうと…
だが、俺が視線を向けても、そんなのお構いなしに俺たちを見ているその様子は、珍しいものを見ている目だった。


「腹減りは、治ったのか?」
手「あぁ、本当に感謝する。名無し、相談なんだが、ここで寝泊りをしても構わないだろうか?」
「…いいだろう、私も貴様らを見張れるしな」
不「ありがとう、とりあえず、今日はもう休もうか、皆もう疲れてることだし…」
大「そうだな、明日はこの森をまた探索してみよう」
乾「海岸で船が通るか、見張りも必要だな」
手「また明日も、君に会えるか?」


仲間がこれからの心配をしているときに俺としたことが、明日も彼女に会える核心が欲しかった。
確かに、助けが来たらすぐにでも東京に戻りたい気持ちももちろんある。しかし彼女とまだ、しばらく一緒に過ごしたい気持ちになっていた。

「あぁ、明るくなったらまた戻ってこよう。いいか、もし貴様らがこの森を破壊しようものなら、私を殺すことを考えようものなら、その瞬間に貴様らを殺すからな」

まだ、彼女の信用を得られそうにはなかった。

彼女はそう言い残すと、また湖の底深く、消えていった。

桃「何なんすかねあの子。そんなに俺たちが殺すように見えるんすかね」
乾「もし本当に彼女が龍ならば、俺たち人間は敵だからな」
不「何かの本で読んだことがあるんだけど、太古から龍の血を飲めば延命、その肉を食らえば不老不死って言う伝説があるらしい。彼女が言っていた邪馬台国の時代から、良からぬことを考えた人間たちが、龍を狩りに行っては、正気を失って帰ってきたって伝説があるよ」
河「帰ってきた?でも、彼女は何かあると殺す殺すって言うじゃないか」
海「アイツは本当は、殺す気はないってことっすかね」
越「または、殺す力がないか…」

もし、500年の間に、何人もの人間が名無しを狙って訪れているのなら、彼女の怯え様も分かる。しかし、殺されていないのはなぜだ…

手「とにかく、今日はもう休め。話しは明日になってからだ」
皆、身体的精神的の疲れが酷そうだった。横になるとすぐに眠り始めた。

龍の伝説については、もう少し彼女が心を開かない限り、聞くのはタブーだろう。

木々が揺れ、風の音がする。
肌寒さを感じながら、俺も瞼を閉じた。
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