∞手塚長編U∞

□3話
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俺は代表して湖に、彼女に近づき、話を始めた。
手「ここは日本でいいんだな?」
「邪馬台国、大日本帝国、私が知っている言葉はそのくらいだ」
手「そうか、分かった。君は人間なのか?」
「………」

彼女はまた黙りこくって、水中から体を出して見せた。
手「……」
菊「…え?」
大「こりゃ…」
乾「理屈じゃない…」


皆はやはり動揺していた。俺が人間かどうか問うた理由が、理解できたようだ。


「私は龍だ。この森、この湖の守りの主。水龍だ。」


さっきはシルエットでしか確認できなかったが、彼女の上半身は、紛れもなく人間の、女性の姿で、腰から下は尾びれというか、まさに龍の尾っぽの部分そのものであった。

桃「りゅ、龍!?」
河「夢でも見てるのかな…?」
手「夢ではない。コレが現実だ」


彼女はまた肩まで潜り、話し続けた。

「私は、半分龍、半分は、人間なのだ」
手「…半分?」


彼女は遠くのほうを見つめながら
「私の母様は、人間の男と恋に落ちた。その男も、当初は龍という存在を殺しに来た、狩人だった。しかし、その男は不思議な力を持ち、母様と言葉を使わないコミュニケーションをとった。」


みんな、真剣に彼女の言葉に耳を傾けた。

「その男は、…私の父様だが、龍を殺す目的でやってきたのに、母様を殺さなかった。毎日毎日、森の花を摘んでは、この湖に撒いた。母様も次第に惹かれ、人間に姿を変え恋に落ち、わたしと兄様を産み落とした。」


皆言葉が出なかった。
まるで御伽噺を聞かされている子供のようだった。


「それがもう、およそ500年ほど前の話だ。父様は人間だったから、寿命は短く、すぐに死んでしまい、母様も龍であればもっと長く生きられたものを、人間のまま余生を過ごし、翌年亡くなった。」


手「君のお兄さんも、ここに居るのか?」
久しぶりに言葉を発した気がする。口を開くのがひどく重かった。


「ここには私しか居ない。兄様は違う森に居る。気配で感じるが、生まれた数日以降、会っていない」


もう辺りは真っ暗になっていた。虫の音が響き、草のこすれる音が映画館の音響のように感じた。


ぐうぅぅ


俺たちは驚いてその音の発生源を見た

桃「なっ…はっはっは///いやー、腹減りません?」
海「少しは空気読めよ馬鹿が」
桃「あぁ!?なんだとマムシ野郎が」
海「やんのか!?フシュ〜」
大「二人ともこんな時まで…やめないかっ!」


彼女を見ると、彼女も驚いたような顔をしていた。
彼女は俺を見て不思議そうに首をかしげた


「腹減りとはなんだ?」


手「空腹のことだ。何かこの辺りに、食べられるものはないか?」
「食べ物…私には分からぬ」
不「君はいつも何を食べてるの?」
「私は空腹にならぬのでな、何も食べないぞ」
菊「え〜!?じゃあどうやって生きてるのにゃ〜!?」


確かにそれはものすごい疑問だった。
食べ物を知らないで、しかも500年といって言ったか。龍という生物はいったいどうして生きているのだというのだ。


「私はこの湖に居るだけで、何も食べなくても生きている。」


この湖は、何か特別な力があるのか…?


越「魚とかいないんすかね?」
「さかな…いるぞ」
桃「まじっすかぁ!?ちょっと食べてもいいっすか!?」





「…さかなたちを殺すということか?」
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