∞手塚長編∞
□#10
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「遅くまですまなかった、ご馳走様」
「いいえこちらこそ、気をつけてね」
不安だった、手塚君のことで、知らないことが多すぎて。
でも、お互いこれからたくさん話して、ゆっくりでいいから、お互いを知っていけばいいんだ。
あなたを好き、という事実は、決して変わらないから。
どのくらいの時間だったか、時計さえ見えなかったから分からないけど、
手塚君の広い胸の中に抱かれて、温かさを知って、冷えていた体だけじゃなくて、心まで温かくなった。
たくさん、キスもして、気づけば遅い時間になっていたので、手塚君は帰っていった。
見えなくなるまで、その愛しい背中を眺めていたら、振り返って笑ってくれた。
思わず私は恥ずかしくなって、大きく手を振ると、手塚君も小さく、手を振ってくれた。
家に戻り、洗い物を済ませて、お風呂から上がると、ちょうど携帯が光っていた。
『今日は不安にさせてすまなかった。気恥ずかしいのであまり言いたくはないんだが、俺を信じていて欲しい。名無しさんを世界一愛している。夕飯美味かった。おやすみ。』
ニヤケちゃって、直視できないメールに、ドキドキした。
『ありがとう、これからたくさんの、私だけの手塚君を教えてください。またご飯食べに来てね!おやすみなさい』
なかなか寝付けずにいたけど、気づいたら目を閉じていた。
翌朝、登校中に携帯のチェックをしながら歩いていると、後ろから声をかけられた。
「やぁ、おはよう」
「あ、不二、おはよう」
「なんだかご機嫌だね、手塚と何かあった?」
「え///何もないよ!やだなぁ!」
昨日のこと、思い出すとまた恥ずかしくなって顔が熱い。
「もしかして…手塚とヤッ…」
「ばかっ///朝から何言ってんの!?ナイナイそうゆーのじゃないっ!」
不二もよくからかってくるけど、なんだかんだ心配してくれてるのは分かってる。
「不二、ありがとね」
「何が?」
「なんとなく、言いたくなっただけ」
「何だいそれ、気味悪いな」
「酷くないっ!?笑」
ホントにここ最近、気持ちが楽になってきたような気がする。
そりゃ、昨日までは、不安がすごく大きかったけど、何と言うか、大切な友達がいて、居場所があって、大好きな人の隣にいられる。
それが私にとって、どれだけ大きな支えになっているか、沢山の感謝の気持ちが沸いてくる。
「名無しさんは今日バイト?」
「うん、ラケット調子悪いの?」
「いや、そんなことはないよ。今日部活早く終わるらしいから、帰りに寄ろうかと思って」
「そっか、待ってるよ!」
不二はいつだってそばにいてくれて、私を見守ってくれている。
大きな意味で、テニスと出会えて嬉しい、よかった。