ホラー
□学校の七不思議〜旧校舎の怪〜
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七不思議。
学校と名の付くところになら大抵ある昔から学校に伝わる怪談。
たとえば、二宮金次郎の像が夜歩く。たとえば、音楽室のピアノがひとりでに鳴る。
七つではなく、八つであったり九つであったりと場所によっては数が変わる場合もある。
学校に伝わる不思議を全て知れば、不幸になる・死ぬなどという結末を迎えるとされることが多く、不思議の最後の一つははっきりせずに隠されていることもある。
これは、とある県立高校に伝わる七不思議を巡る五人の高校生の物語。
◆ ◆ ◆
六月に入り、だんだんと蒸し暑くなってきて、先週制服が冬服から完全に夏服に移行した時期のある朝のこと、一年六組の教室の一つの机の前に、四人の男女が集まっていた。
「ねぇ、見て。昨日こんなの見つけたの」
茶色がかった黒髪にボブカットの少女、中村弥生は生き生きした瞳をしながら机の上に一冊のノートを取り出し置いた。
「これがどうかしたのか?」
男にしては少し長めの焦げ茶の髪で、おとなしそうな印象を与える少年、峰山浩太は弥生に聞いた。
「また弥生の大好きな心霊物?」
長い黒髪をポニーテールまとめた少女、内山芽伊里は呆れたように言った。
「なんか、嫌な予感しかしないんだが……」
さっぱりとした印象を与える短い黒髪の少
年、如月真人は半袖から出た腕を寒そうにさすりながら青い顔をして言った。
「別に呪われちゃいないわよ」
心外だというように弥生は言う。
「じゃ、なに?」
尋ねてきた芽伊里に、弥生は待ってましたという風に表紙をめくった。
「うん、これはね」
ノートの最初のページ、弥生の示した部分にはこうあった。
『秋桜高等学校−旧校舎七不思議』
「旧校舎七不思議?」
「そう、ここには我が秋桜高校の旧校舎の七不思議が載ってるの」
「七不思議って、多くないか? この新校舎だけでどれだけあると思ってるんだよ。旧校舎となると新校舎よりさらに多いぞ。」
浩太の言葉に芽伊里と真人は頷いた。
県立秋桜高校は創立百二十年のかなり歴史のある学校だ。生徒の自由をモットーとしているため、校則は緩いがレベルはそれなりに高い、ある程度人気の進学校だ。旧校舎と新校舎があり、現在旧校舎は立入禁止となっている。
また、学校にある怪談の数は県内NO.1で、設立約三十年ほどの新校舎も旧校舎に負けず劣らず怪談の宝庫である。
「まあ、そうだけど。多分これは怪談の中で信憑性のあるものがまとめてあるのんじゃないかな、と思うわけ。ほら、ノート自体から本物の怪談のニオイが結構するのよね!」
力説するようにそういう弥生のセリフを聞いて、『本物の怪談のニオイ』とやらが分からない彼らの中では『弥生=心霊マニア』のイメージが余計に強くなった。
弥生は文芸部に所属しており、 昨日は月に一度の大掃除でこのノートはそのときに見つけたものだそうだ。
「かなり古いな。なんか黄ばんでるぞ」
真人はおそるおそるノートを手に取って言った。真人は怖い話を聞くことはそれなりに大丈夫だ。
彼らは今まで心霊マニアの弥生に引きずられ、何度も心霊スポットに言ったことがある。もちろん、はずれもあれば当たりもあった。他の者達は次第に慣れていったが、真人は体験することだけはどうしても慣れることが出来ずじまいだ。