ホラー
□後影憑き
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夜にその道を歩いていると、ふと気付く、自分とは別にもう一つ足音が聞こえる。
音からするに、靴を履いていないそれは、ぺたぺたと音を立てながら裸足で後ろから付いてくる。
走っても、早足で歩いても、その変化に合わせるかのごとくその速さと全く同じリズムで付いてくる。
道の終わりを見つけて安心して、ふと、気付く。
足音が、ずれている…………。
先程まで自分とピッタリ合っていたそのリズムが、自分が歩くのよりも、もっと速く。
それに気付いたならば、すなわち、その足音よりも速く歩け、走れ、足音よりも早く道を抜けろ、足音に追い越されてはいけない。
なぜならば、追い越されたその時、足音の主に殺されてしまうから……。
その足音の主は『後影憑き神』と呼ばれるものだと言われている。
注意深く、どんな音にも耳を澄ましその存在に気付け。
決して追い越されてはならない。
『後影憑き神』に、ご注意を。
*
九月の始めのその日の朝、道の真ん中で一人の少女の遺体が発見された。
それは、今年に入って五人目のこの道での死者。
紫苑市鈴蘭区の街中、ビルの林立する間の狭く入り組んだ路地の奥深く、その一角にそれはあるという噂。
どんな心霊現象でも解決してくれるという場所。
『陰陽心霊探偵所』
さあ、扉を開ける準備はいいかい?