*book*

□sentimental@
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美鶴は屋上の床に寝っ転がりながら空を見た。

この空が綺麗だとかは一度も思った事は無い。

何とも思わない 空。

それでも他にする事が無いからつい、見上げてしまう。







誰かがこっちに来る足音がした。





「あ、美鶴!いたいた〜」



頭上に亘の足があった。
上に視線を向けると美鶴を見下ろす亘。



「なんだ、亘か」



亘は寝っ転がる美鶴の横に座る。
美鶴は面倒臭そうに体を起こした。





雲一つ無い、蒼く澄んだ空。
屋上のフェンスから亘は空を見た。





「そういえば幻界の空もこんな風に綺麗だったなぁ…あ、美鶴も見たことあるでしょ?」

「さぁ、空までは覚えてない」



幻界での記憶は残っている。
だがあの時は景色など気にしている余裕なんてなかった。



「そっか、もう二年だもんね…」



あれから二年が経つ。

幻界で消えてしまった美鶴。
だけど帰ってきた。
だからこうして隣にいる。


今年、中学へと入学した美鶴と亘。
中学の制服に身を包んだ亘は随分と大人っぽく見えるようになった。
それは美鶴もだが。

紺色掛った黒髪が風で揺れる。
美鶴はそれに手を伸ばしたくなった。



「亘…」

「ん?なぁに、美鶴」

「あ、いや…なんでもない…」




突然振り向いた彼と 行き場の無くなった手。

すると亘は口を開いた。





「あっ、聞いたよ。今日も告白断ったんだって?」

「ああ、それか…」



疲れきった表情を見せる美鶴。
そんな彼に苦笑いを浮かべる。



「相変わらずモテるんだね、美鶴」




“クールで格好良い上に成績優秀”

そんな彼が女の子に人気があるのは目に見えている。
入学式でもクラスでも美鶴は一際目立っていた。

女の子からの告白が絶えないのは仕方が無い事。



「でもさぁ…あれだけ告白されておきながらずっと断り続けているって事は“他に好きな人”がいるって事だよね?」

「なっ?!」



突然美鶴は亘の言葉に顔を上げた。
目の前にはにっこりと笑う亘の姿。

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