*book*
□second lovers
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二 度 目 の 恋 を し た
現世で再会した美鶴は何処か表情が穏やかで、以前の彼とは違っていた。
それに死んだ筈の妹がいて、幻界のコトやボクのコトは一切覚えていない。
そこだけが空白だった。
改めて?仲良くなったボク達はいつも一緒だった。
というよりも美鶴が僕から離れたがらない。
彼はサッカーもするし、ゲームもする。
無邪気にだって笑う。
彼が見せる素振りはボクの知る“芦川美鶴”には無いモノばかりだった。
「―――…たる、亘?」
「えっ?」
ボクは美鶴がずっと呼んでいたコトに気付かなかった。
彼と話している最中にいつの間にかボーッとしてしまっていたらしい。
「話、聞いてなかったな」
「…ごめん」
ボクは未だに彼と再会した時のコトを引きずっている。
“キミ、だれ?”
それは彼が何にも覚えていない証。
これはかなり痛かった、かな。
「どうして亘はいつも哀しい顔をするんだ?」
「そんなこと、ないよ…」
分かってる。
ボク達はまた会えた。
もう、これでいいじゃないか。
ボクは笑った、無理に。
それでも美鶴はそれを許してはくれない。
「嘘だ。泣きそうな顔をしてる」
美鶴の手がボクの頬に触れた。
すると、彼より小さいボクの体は簡単に抱き込まれてしまう。
「みつ、る…っ?!」
「俺…亘が好き。亘が好きだよ。亘は俺と一緒にいるのは嫌?」
ボクは静かに首を振った。
「ごめん…、ね」
「なんで亘が謝るんだよ、悪いのは俺なんだろ…?」
「美鶴は、悪く…、ないよ…」
美鶴の背に手を回す。
運命の塔で別れた彼もこんなにも細くて脆かった。
キミは何にも覚えていなかったけど、
「美鶴…すき」
ボクは消えゆくような コエ で呟いた。
ボク は 二 度 目 の 恋 を し た
2007.01.13
ボクは キミが すき
私は覚えている派なのですが、こんなのも良いかと…