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□全ては君が好き故に
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「アリス先輩」

「はいなんでしょー?」


レギュラスくんは私の後輩だ。
頭良くてかっこよくて運動神経もいい、完璧に近い人間じゃないかと思う。
ただあまり感情を顔に出さないからとっつきにくいとか思われてる。
でも実はすごい優しいし、話しやすい、だから私は仲良しだったりする。


「押し倒していいですか?」

「………はい?」


なんか幻聴が聞こえたぞ、何だ今の。
レギュラスくんがそんなこと言う訳ないじゃん。
お兄さんのシリウスくんなら分かるけど、あの人いろいろ有名だから。


「ごめん、何て言った?」


レギュラスくんはそれはもう爽やかに笑って言い放った。


「ですから、理性が保たないので押し倒してもいいですか?」


今度ははっきりと聞こえた、認識した。
頭の中で何度もその言葉を反芻して、そして結論。


「レギュラスくん壊れた?」

「いいえ。大丈夫です、まだ理性はかろうじて残ってますから」


何恐ろしいこと言ってるのこの子、レギュラスくんはもっと紳士のはずだ…!


「じ、冗談にしてはきつすぎるよー」

「僕はいつだって本気です。今しかないと思いまして、談話室に二人きりなんて、なかなかないおいしいチャンスですよね」

「な、何言ってんの!」

「アリスが可愛すぎるのが悪いんですよ」


わ、こいつサラッと呼び捨てにしやがった。


「名前を呼んだときこちらを振り向く表情とか、食事中の幸せそうな顔とか、寝顔とか」

「ちょい待て、何で寝顔知ってるの」

「この前談話室の暖炉の前のソファーで気持ち良さそうに寝ていたのは誰でしたっけ?」

「うっ……ごめん」

「襲わなかった自分に盛大な拍手を送りたいですよまったく」


そういえば夕食の後に寝ちゃった気が…レギュラスくんが起こしてくれたんだっけ、風邪引くからって。


「それから甘いものを見てる目とか、羽根ペンをインクに浸すときの指とか、小さく笑ったときの唇とか」

「いや、細かすぎて怖いよレギュくん」


レギュラスくんはおもむろに私の長い髪を手にとった。


「もう全て、僕を魅了しすぎです」


私の髪に口付けながらそう言った。
そのクサイ仕草さえ似合ってしまうのが悔しい…。


「なので我慢の限界です。好きなんです、押し倒してもいいですか?」

「………ん?今好きって言った?」

「はい」


私今ものすごいアホ面だと思う、いつにも増して。


「レギュくんって私のこと好きなの?」

「…え、気づいてなかったんですか。あからさまに話しかけに行ったり、偶然を装って待ちかまえたり、いろいろと頑張ってたんですが……まさか伝わってなかったとは」


あー、苦笑した顔もかっこいいなあ。
…あれ?


「レギュくん私のこと好きなんだよね?」

「さっきからそう言ってます」

「私もレギュくん好きだよ」


レギュラスくんは少し驚いたみたいだったけど、すぐに嬉しそうに笑った。


「だったら僕と付き合って下さい」

「もちろん!」

「……言っときますけど、押し倒したいから付き合うわけじゃないですよ?」

「当たり前じゃん!」


レギュラスくんは私をふわりと抱きしめた。


「いつでも一緒にいたいから付き合うんです」


赤くなった顔を隠すために、レギュラスくんの胸に顔を埋める。
伝わってくる少し速い鼓動が、なんだか心地よかった。







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