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□また明日
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明日が来なければいいと願いながら、僕は隣に座る君の手を握った。
君は僕と同じ死喰い人でありながら、どこまでも純粋で。
僕にとって、闇の中の唯一の光だった。


「どうしたのレギュラス、元気ないね?」


心配そうに首を傾げる君が、こんなにも愛おしくなったのはいつからだったろうか。


「いえ、なんでもないですよ」


君に気持ちを伝えたとき、真っ赤になりながら「私も」と言ってくれたこと、僕はきっと忘れない。

僕は明日、死ぬ
僕にはやらなければならないことがある、それをやることに抵抗はない。ただ、君を愛してしまったのが間違いだった。
ずっと一緒にいたいと、願う僕がいる。


「アリスさん、幸せですか?」


どうしてそんな質問をしたのか自分でも解らない。
ただ、残り少ない一緒にいられる時間、君を幸せにしたいと思ったんだ。

「うん、とっても」


そう言って笑う君は、本当にきれいで、僕の汚さがいっそう引き立つように感じた。


「でも、レギュラスは幸せじゃないみたいだね。そんなに悲しそうに笑うなんて」


ああ、君に嘘は吐けないな、完璧に笑ってみせたつもりだったのに。


「どうかしたの?卿に怒られた?」

「わが君に怒られたらそれは死ぬって意味でしょうね」

「あは、そうだね、じゃあ卿から死の宣告でも受けたの?」

「宣告受ける前に殺されちゃいますよ」



こうやって冗談を言い合うのも、今日まで。
君と話すのも、触れるのも、名を呼ぶのも、今日まで。
その"今日"も、もうすぐ終わってしまう。


「アリスさん……僕は…、」

「レギュラス?」

「……アリスっ、」


小さな君の体を、僕の腕に閉じ込めた。
君は驚いていたようだけど、僕の背に手を回してくれて、何だか涙が溢れそうになった。


「僕、幸せですよ」

「うん」

「アリスに出会えて、好きになって、こうして一緒にいられて」

「うん」

「僕は、僕は……っ、」


今日という日まで、幸せでした。


「レギュラス」


腕をゆるめると、君は僕を真っ直ぐに見つめた。


「これからも、ずっと一緒だから、ずっと幸せだよ」

「そう、ですね」


そうして僕らは、どちらからともなく唇を重ねた。
君との最後のキスはどこまでも甘くて、どこまでも悲しかった。


「…もう帰ろうか、明日も闇祓いが煩そうだし」


そう言って帰ろうとする君を呼び止めることもできずに。


「おやすみ、レギュラス」

「おやすみなさい、アリスさん」

「さん付けに戻ってるし」

「……おやすみなさい、アリス」

「うん、また明日」


満足そうに笑って、君は姿現しで消えた。







その"明日"は、当分お預け。




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