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□鬼畜レギュ
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今日も空が青いですね皆様ごきげんよう。
私はスリザリン寮の談話室のソファーに座って我が愛しのレギュラスの綺麗にまとめられたノートを写させて頂いていたのですが、それというのもいつも授業中うつらうつらとしてしまって板書を最後までとることのできない私が悪いのであって。
だからレギュラスが「今度のホグズミード一緒に行くのなら」という何ともかわいらしい素敵な条件でノートを貸して下さったときは内心めちゃくちゃ驚いたのですよ。
そして問題はそのノートであって、今現在濡れてしまっているんです。
涎ならまだ色が付いてないから誤魔化せたかもしれないけれど残念なことに色の付いたものなんですよ。
実は飲んでいた紅茶をあろうことかレギュラスののノートに盛大にぶちまけてしまったわけで、ねぇこれどうしよう。
これが普通の人のノートなら土下座でも何でもして許してもらうんだけどレギュラスはそうはいかない。
だってあいつは大魔王なのだからきっと私が土下座したとしても「鬱陶しい」と言い放ち、何をすれば許してくれるのかと問えばきっと笑顔で「死んで下さい」と答えるだろう。
死にたくはないけれどこの紅茶がすっかり染み込んで几帳面な字も滲んでしまったノートを隠すなんて不可能だから謝るしかないというのはわかってる、でも謝っても死ぬのに変わりはないから一体どうすればいいんだ。
すっかり頭がパニックでとりあえずレポートを提出しに言ったついでに先生と談笑してあるであろう大魔王ことレギュラスが帰ってくる前に落ち着かないと。
「大丈夫だよ自分、いくらレギュラスといえど本当に殺されはしないさ。時間を戻す魔法とかないのかな、ダンブルドアあたりに頼み込んだらどうにかしてくれないかな」
「何をブツブツ言ってるんですか?」
嘘だろ今レギュラスの声がしたぞ後ろから声がしたぞ。
私はごく自然に後ろを向いて「お帰りー」と言った、目は合わせられなかったけど。
残念なことに変に目をそらす私に気づいてしまったらしく冷たい視線が私を射抜く。
「アリス、何かしでかしましたね?正直に言……、」
途中でレギュラスの言葉が止まったのはその目に悲惨な己のノートが写ったからだ。
「ごめんなさいレギュラス様本当に申し訳ないです」
「煩い」
レギュラスは私の隣に来て紅茶まみれのノートを摘んだ、ぽたりぽたりと茶色い滴が落ちた。
「これは何ですか」
「レギュラスのノートです」
「どうしてこうなったんですか」
「私が…飲んでいた紅茶を、零しまし、た」
涙目でそう答えレギュラスに目を向けると恐ろしいくらい綺麗にほほえんで。
「死んで下さい」
ほら言ったー!
絶対言うと思ってたんだよねでも実際言われると予想以上に傷つくなこれ。
「まぁアリスの命程度では償いきれない罪ですけど。もうこれ使い物にならないじゃないですか」
「や、ほら。最初の方のページは意外と大丈夫かも」
レギュラスはノートを暖炉の中に放り込んだ、もちろんノートは燃えてしまい跡形もなくなった。
「燃やさなくたっていいじゃん」
「紅茶まみれのノートなんて使いたくないですから」
レギュラスはソファーに座り優雅に足を組んで私を見た。
「さて、どうしてくれましょうか」
私のネクタイを思いっきり引っ張って鼻先が触れてしまうほどに顔を近づけられた、怖いし苦しいし恥ずかしい。
「ねぇアリス、服従の呪文って知ってますか?」
「ッ!!」
本能が危険だと体に指令を出した、まさに火事場の馬鹿力というやつで捕まれたままのネクタイからレギュラスの手を引っ剥がして私は寮を飛び出した。
全力で、もはや吐き気がするほどに走った。
人生で一番の走りだったに違いない。
壁に手をついて息を整える、さすがに追ってこないよな、と安心した瞬間に。
後ろからポン、と肩を叩かれた。
いやいや友達か先生だよきっとそうだ誰かそうだと言ってくれ。
「アリス」
私の名を呼んだ声は間違いなくレギュラスのもので、私は目に涙を浮かべてゆっくりと振り向いた。
怖い怖すぎます、笑ってるのにこんなに人を恐怖に陥れられるのなんてレギュラスくらいしかいないでしょうね、一体どうやって追いついたんですか私殺されるんですか。
「その顔、その恐怖でいっぱいのアリス顔がたまらなく大好きなんですよ」
あぁなんて悪趣味な人だろう。
でも私も、そうやって真っ黒に笑うレギュラスの顔が大好きなわけで、これはもう取り返しのつかないところまで惚れ込んじゃってるなーと、キスをされながら頭の片隅で思った。