.

□その一言が言えなくて
1ページ/1ページ


新学期が始まる前日、僕はアリスとダイアゴン横町に買い物に来ていた。
アリスは僕の一つ上で、幼なじみでもある。
僕の幼なじみということは兄さんの幼なじみということにもなって、つまり僕らとアリスは小さい頃からの長い付き合いだ。
アリスの家は名家で、僕の親とアリスの親が友人だったため、必然的に仲良くなった。
そして厄介なことに、僕は数年前からアリスが好きだ。
もう一つ厄介なことに、兄さんもアリスが好きだ。
当の本人は全く気づいてないけれど、兄さんとは水面下でいろいろと争ってる。
今回は僕の勝ちだ、兄さんは僕がアリスと二人で買い物してるなんて知らないから。



「あー人に酔う。吐く」

「やっぱりなかなかに多いですね、お願いだからこんなところで吐かないで下さい」



新学期前日とあってかいつもより込み合っている。
これじゃあはぐれたら大変だな。



「アリスはすぐ迷子にるんですから勝手にどっか行かないで下さいよ?もしノクターン横町に入り込んだらあなたみたいな人はものの三秒で……って、アリス?」



ふと横を見るとついさっきまでいたはずのアリスがいなかった、何ですか瞬間移動ですか。



「っとに昔から変わりませんね…!」



小さい頃もアリスが一人でブラックの屋敷を歩き回るから、いつも僕と兄さんは苦労させられた。
一瞬でも目を離したらすぐにいなくなってるから本当に困る、心臓に悪い。



「レギュー!」



僕が多少焦りながら辺りを見渡していると、どこからかアリスの声がした。



「こっちこっち!」



ぴょんぴょん跳ねて僕を呼ぶアリスを見つけた、恥ずかしいからやめてほしい。
アリスは店に売られている猫を見ていたらしい。



「何やってるんですか」

「この子すんごくかわいいんだよ、おいしそう」



確かにかわいい猫だけれど勝手にいなくなるのはやめてほしい、ん?
おいしそう?
アリスが猫が入っているゲージに指を近づけるとペロペロと舐めた。



「あなたには梟がいるでしょう」

「いるけどそれとこれとは別だよ!猫の方がきっとおいしいもん」

「とにかくほら、行きますよ。あんまり見てると店の人が買うのかって勘違いしちゃいますから」

「…わかった」



何だか危ない発言をしているアリスをどうにか猫から引き離すことに成功した。
アリスはしょんぼりしてしまって、猫なんかよりよっぽどあなたの方がかわいいですよ。



「後で好きなお菓子買ってあげますから、そんなに落ち込まないで下さい」

「ほんとっ?…いやいや私お菓子に釣られるほど子供じゃないし」



一瞬本気で喜んだくせに、おもしろいなぁ。



「じゃぁいらないんですか?」



意地悪くそう聞けばアリスはむすっとしながら、



「………いる」



と答えた。
それがおかしくてかわいくて笑いを堪えようと必死になる、アリスはそれがまた気に食わなかったらしく僕を睨みつけた。



「はははっ、す、みません。アリスがあんまりかわいいから」

「からかわないでよ!」



怒っても怖くない、むしろかわいさが増す。
なんか妹みたいだな、妹に恋をするなんておかしな話だけれど。



「あ?アリスと…レギュラス?」



あぁ、会ってしまった。
実は今日兄さんはポッター先輩とダイアゴン横町に来ていて、これだけ人がいるなら見つからないかと思ったんだけれど。



「何で二人でデートしてんだよ!」

「デートじゃありません、買い物です」

「抜け駆けには違いねぇよ!」



面倒くさいな、この人と血の繋がりがあるかと思うとたまにどうしようもなく嫌になるときがある、たとえば今とか。



「アリス、何でレギュラスなんか誘ったんだよ!」

「だってシリウス、ジェームズ先輩と行くって言ってたから…ほんとはレギュとシリウスと三人で行くつもりだったんだけど」

「アリスが誘ってくれたらジェームズなんか断ったってのに!」

「おいおい今のは聞き捨てならないよパッドフット」



ポッター先輩までやって来た、早くここを立ち去りたい。
この二人が揃うとろくなことにならないから早くここを立ち去りたい。



「君って奴は親友をなんだと思ってるんだい?」

「だってアリスだぞ?こんな天使みたいにかわいいのにその誘いを断る方がおかしいだろ!」

「アリスちゃんが天使ならリリーは女神だね!」

「知るかよ、アリスの方がかわいいに決まってんだろ!」



アリスはといえば二人を見て暢気に笑っている、自分のことを言われてるってわかってるのか、いやわかってないんだろう。
恐らく二人とも仲良いな、くらいにしか考えてない。



「アリス、行きましょうか」

「え?この二人いいの?」

「放っといてお菓子でも買いに行きませんか?」



アリスは満面の笑みで大きく頷き、僕らは静かにその場を離れた。
人混みの中を歩いていると、自然とお互いの距離も近い。
手が、触れそうで触れない、もどかしい距離。
僕はそっと、アリスの手を握った
すると驚いたことにアリスは優しく握り返してくれて。
僕がアリスを見ると、その視線に気づき、



「レギュが迷子にならないよーに!」



と、そう言った。
僕は「迷子になるのはあなたでしょう」と言いながら、動揺を隠すので精一杯だった。
今日は手を握れたから、明日こそ「好きだ」と言ってみようか。



「なんて言いながら、もう何回先延ばしにしたんだろう」

「何を?」

「何でもありませんよ、馬鹿アリス」

「なっ、馬鹿じゃないもん!」



馬鹿ですよ、こんなに好きなのに気づいてくれないなんて。
何年も言えずにいる僕だって、ただの馬鹿なんだろうけど。





(あ…れ、あいつらどこ行きやがった!)
(いつの間にいなくなったんだろうね)
(くそレギュラスのやつ抜け駆けしやがって…!よし、今日こそアリスに告白してやる!)
(君それ毎日言ってないかい?)

-------------------
黒兄弟でギャグ甘書かせていただきました!
ギャグが書けません、これギャグですか…?
レギュ贔屓とのことだったのでそうしてみたらシリウスがかわいそうなことになりました(悦)←

棗透様、リクエストありがとうございました!


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ