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□フランクラバー
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セブと付き合いだして二年と三ヶ月、最近セブが冷たい。
目が合ってもすぐに反らされるし、抱きつけば引っ剥がされる。
ホグズミードでデートしたことなんて一度もないし、最後にキスしたのはいつだっけ。
別にバカップルみたいにいちゃいちゃラブラブしたいわけじゃない、ただこれじゃあ付き合う前に戻っちゃったみたいだ。

告白したのは私からだった。
同じ寮の同じ学年で、本も好きだったからセブとは他の人と比べてよく話す方だった。
時折見せる笑顔やさりげない優しさにいつの間にか惹かれて、ある日無意識のうちに好きだと言ってしまった。
セブは俯きながら小さい声で「僕も、だ」と言って、そして初めてキスをした。
毎日が嬉しかった、楽しかった。
別に特別なことをするでもないけれど、前よりもセブが私を気遣ってくれるようになったし、嫌なことがあったときは抱き締めて頭を撫でてくれた。
甘い声で私の名前を呼び、赤くなった私の顔を見て意地悪に笑うセブが好きだった。

今日は待ちに待ったホグズミードの日だ、みんなにとっては。
もちろんセブを誘ったのだけれど、「部屋で本を読む」と、そう言われた。
私とのデートより本が大事なの、なんて面倒くさい女のようなことは言わないけど。
虚しくて、寂しくて、すごく、空っぽだ。

私はセブの部屋のドアを開けた、中にはセブしかいなくて、ベッドに腰掛け本を読んでいた。
きっと同室の人は皆、ホグズミードに行ったんだろう。
セブは入ってきた私に視線を向けることはなく、手元の本を黙々と読み続けている。
部屋に入り、ドアの近くに立ったままセブを見つめた。
どうしてこんな人、好きになったんだろう。
見るからに淡泊で、恋なんてしないタイプじゃないか。
でもやっぱり見れば見るほど愛しさが募って、あぁ、どうしてこんなに好きになっちゃったんだろう。
私がじっと見つめていると、セブは本から私に目を移した。
その眉間には深々と皺が刻まれていて。



「何か用か」



冷たい声で言われた、恋人なのに用がないと来ちゃいけないのか。
友達とじゃなくてセブと過ごしたくてホグズミードにも行かなかったのに。
一緒にいたいのは、私だけみたいだ。
私はセブの目の前まで行き、目を合わせて言った。



「別れる」

「は?」

「別れる」



必死で涙が出てくるのを堪えながら、私ははっきりとそう告げた。
セブはやれやれといった感じで一つ溜め息を吐いた、もはや私の存在は厄介者なのか、何かもう、消えちゃいたくなるよ。
セブは本を閉じた、だめだ、泣くな私。



「いきなり何だ?」

「だって、私ばっかりセブが好きで、辛いよ。寂しいときでも抱き締めてくれないし、目もすぐ反らすし」



自分で言いながら胸にぐさりと刺さる、痛い、いたい。



「私なんか…もう、どうでもいいんでしょ?だから、別れよう」

「どうしてそうなったんだ、」



小さく呟くと、私の腕をぐんと引いて。



「わっ!」



セブは私を抱き締めながら後ろにぼすんと倒れ込んだ。



「セ、セブ!私重いから!!」



セブの上から退こうとするものの、強く抱き締められているせいで離れられない。
どんどん加速する心臓の音は、きっとセブにも聞こえてる。



「目が合うとそれだけで嬉しくて口元がだらしなく緩むから嫌なんだ」

「へ?」

「抱き締めないのは僕に余裕がないのがバレるから」

「ちょ、」

「ホグズミードに行かないのはかわいい格好のアリスを他の奴に見られるのが気に食わないから」

「な、に言って…」

「男の嫉妬なんて見苦しいだけだろう」



だから言えなかったと、セブは私の髪を優しく撫で、私は状況についていけない頭で必死にセブの言葉を聞きながら、その手の温かさを感じていた。



「会う度に好きになるからいつも余裕がなくて、いつもお前のことばかり考えて、もうどうしようもなく好きなんだ」



そんな風に思ってくれてたなんて知らなくて、嬉しくて。
心臓がうるさいのは、私だけじゃなかった。



「アリス、」



優しく名を呼んだ彼が、ふ、と笑ったのが空気でわかった。



「本当に、好きすぎて困る」



幸せすぎてただ泣けた。







(言わないと伝わんないよ、セブのばか)
(何度も言ったら信憑性なくなるだろう)
(でも全然言ってくれないと不安になるって)
(安心しろ、ずっとアリスだけが好きだ。それから、別れ話なんて二度とごめんだからな)

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セブ切甘……切甘になってます、か?
とりあえずセブはちゃんとアリスさんが大好きです
しおり様、リクエストありがとうございました!


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