02/22の日記
22:25
強く優しい人 2
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「……」
そこには、いつもの優しい笑み。
とうの本人には一度も言ったことがなかったが、シラーは、青年のこの時の表情が一番好きだった。
この世界から疎まれている自分を、無条件に許容してくれる笑み。
なにも心配しなくても、自分を信頼して、見守ってくれる視線…。
シラーがじっとその目を見つめていると大きな手がゆっくりと伸びてきて、その小さな頭をクシャリと撫でた。
「――…」
「…強く、優しい子」
強く、優しい人
もっと強く、もっと優しく。
…イシスのように。
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なんだろ、これ。
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22:11
強く優しい人。
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ふ、と名を呼ばれた。
声のした方を振り返ると、よく見知った端正な顔がそこにある。
そして、その視線の先は、花の茎に触れている自分の手に。
「……」
それに気付き、少年はきゅっと顔をしかめる。
少年の教育係である彼は、こういったことに関して、意外と口煩いところがあった。
「……シラー、花を、手折ってはならない」
案の定だ。
その、軽い注意を含んだ言葉に「…イシスの傍にいると、してはいけないことばかりだ」とふて腐れる。
まだ幼い少年の言葉に、イシスと呼ばれた青年は少し困ったように苦笑してみせた。
「…不快かい?」
「……違う。ただ、こういう風なのは、慣れてなくて…、…それだけだ」
俯いて、モゴモゴと答えるシラーの顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていくのを見て、イシスは肩を静かに揺らした。
「…笑うなっ!」
「はは、…シラー」
また彼の甘い、しかし人を落ち着かせる響きのある声に名を呼ばれて、少年は目線だけをチラリと上げた。
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