捧げ物

□白雪姫
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むかしむかしあるところに、元就というとても美しくて可愛らしいお姫様がいました。
元就は肌が雪のように白いことから、みんなから「白雪姫」と呼ばれていました。



三年前、白雪姫の母親のお妃様が死んでしまい、新しく半兵衛というお妃が迎えられました。

新しい王妃は美しさに執着していて、美しい白雪姫に嫉妬し、疎み、彼女を城の離れに隔離していました。
その為、白雪姫は姫でありながらボロを纏い、召し使いも周りにおらず、掃除洗濯は当たり前、身の回りの事は自分でやっていました。
友達は、たまに王妃の目を盗んでやってくる城の兵士だけです。


白雪姫はあまり他人と関わらないせいか、口数が少なく冷酷なようにも見えましたが、それは自分と関わるとその者が王妃から酷い仕打ちを受けるのではないかと心配していたからです。
本当は優しい姫でした。







白雪姫が12歳になったある春の日の事です。

王妃は、いつものように魔法の鏡に尋ねました。


「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰だい?」

「…一人の少女が見えます。さらさらの茶色い髪、透き通るような白い肌、りんごのように赤い頬、艶のある唇。間違いなく白雪姫こと元就姫です!」

「何だって!?」


鏡は王妃の問いに、すらすらと答えました。
それを聞いた王妃は目を見開いて驚いています。
王妃は鏡の言葉が信じられませんでした。
彼女は昨日まで自分がこの世で一番美しい存在だったからです。
しかし、ついに成長した白雪姫の美しさが王妃に勝ったのです。


「嘘をつくな!この世で一番美しいのは?」

「白雪姫です!」


鏡はさっきよりはっきり、より堂々と声を張り上げました。
王妃はまだ信じられない、といった表情で鏡を見つめています。


「僕の恐れていた通りになった…。あの子は成長したらきっと僕より美しくなると思っていたんだ。僕は秀吉の為に世界で一番美しくなくてはならないのに」


王妃は鏡の前を行ったり来たりして考えました。
険しい表情で床を睨んでいます。

「…そうだ」


王妃は急に足を止めて顔を上げました。
怪しい笑みを浮かべています。
何かとんでもない事を思いついたのでしょう。

王妃は怪しい笑みを浮かべたまま、白雪姫と一番仲のよい兵士を呼び出しました。


「慶次君、白雪姫を森に連れて行って、誰も見ていないところで殺すんだ」


なんと王妃は白雪姫を殺す計画を立てたのです!


「え…殺す!?」

「そうだよ」

「何で!?そんな事俺には出来ないよ!!」


兵士は驚きを隠せません。
まさかそんな命令を出されるとは思っていなかったので王妃に向かって思わず失礼な言葉使いで話してしまいました。


「口に気をつけたまえ。…君に頼むのは、姫と一番仲がいいからだよ。僕が知らないとでも思っていたのかい?」

「……」


兵士は答えられず、俯いてしまいました。
王妃は兵士が白雪姫に会いに行っていた事を知っていたのです。


「白雪姫を殺したら、証拠にその心臓を持ってくるんだ」

「……はい」

「これは命令だよ。失敗は許さないからね」

「はい」


王妃の言葉に、兵士は頷くことしかできませんでした。
王妃の命令に背くことはできないのです。
しかし、兵士に白雪姫を殺せる自信もありません。
兵士は深いため息をつきました。


「何やってるんだい?さっさとお行き!」


王妃に急かされ、兵士は渋々部屋を出て、白雪姫の元へ向かいました。





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