(オリジナル小説より)
一陣ノ太刀



「暁ちゃん」
「……」
「暁ちゃーん!」
「……」
「おい、暁ちゃんって!!」


尽く暁に無視されて、家鴨の子のように後を着いて歩くのは茨木仁。
何故こんなにも無視されているのかというと。


「すまんって!!ちょっと呑み過ぎて!」
「だからあれ程言っているだろう!任務の前日は呑むな、と!」


暁が返事を返した事に幾分かほっとしつつも、頭の上で手を合わせて謝罪を続ける。


「いや本当、反省してっから」
「あんたが『今回の任務は俺に任しとけ』と言ったんだぞ!念の為に太一郎を連れていって良かった。まさか道端で寝るとは」
「だってよ〜あんな仕事じゃ眠く…」
「なら大見栄を切るな」
「ハイ…」


すっぱりと怒られて仁は肩を落とす。
それを見て暁は少し言い過ぎたか、と口を開いた。


「まぁ今回は簡単な任務だったし、次から徹底していってくれれば良い」


それを聞いて仁は吊り上がった目をきゅっと細め、猫のように笑った。


「有り難ぇ!次からはぜってぇ真面目にやっから!命懸けて暁ちゃんを…」
「あんたに守って貰う程弱くない」
「はい…」


再びすっぱりと切り捨てられ、またまたしゅんと肩を落とす。
そんな冷たい態度をとられても、そこは惚れた弱み。
それさえも嬉しそうに仁は暁の後を着いて歩いた。






















「しっかし今回の任務…逃げた政さんの愛猫を捜せ、だもんなぁ。やる気が…」
「立花が持ってきた以上、任務は任務だ」
「さすが。仕事の鬼」
「………(ハァ)」
「スイマセン」





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