葬儀
□不可能な未来2
1ページ/4ページ
【不可能な未来2】
今日はどんよりとした空気、土砂降りの雨に気分を削がれる。
あれから、彼は小生と一緒に暮らすようになった。
仕事はきちんとこなしながら、帰って来ては腹に宿る赤子のために、彼は柄にもなく毛糸で服や靴下を編んだりしていた。
「名前、何にしよっか?」
「んー、何がいいかねぇ。」
「女の子だったらクレアで、男の子だったらカイル。」
「…いいんじゃないかな。」
「でしょー?アタシのセンスは妊婦になっても健在ね★」
彼の病名は、
偽妊娠。
いわゆる想像妊娠だ。
通常、想像妊娠である事を本人に告げれば、症状は治ると言う。
しかし、小生は告げられずにいた。
これほど望んでいた赤子が宿って、これほど喜んでいる彼に、告げられる筈が無かった。
棺に腰掛け、愛しげに腹を撫でる彼の優しい表情を眺めながら、隣りで本当に赤子を授かった夫婦のような雰囲気を味わう。
とても切なく、悲しく、叫びたくなる程のこの感情を、今まで小生は抱いた事がなかった。
.