少年陰陽師

□温もり
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○温もり





「静かに移ろう中で差し込む光♪」


暖かな午後の日差しが差し込む縁側で、玄武は紅蓮の膝を枕にしていた

低く優しい歌声に、一定の間隔で髪を撫でる暖かい手

そして何より頬から伝わってくる紅蓮の体温が心地良い


「隠した戸惑いさえも 照らすその微笑み♪」


玄武はこの時間が好きだった

誰にも邪魔されることなく、大好きな紅蓮に甘えることが出来るからだ


「時は流れても ここに確かな絆♪」


本音を言うともっと甘えたい

もっと一緒に居て、もっとぎゅっと抱きしめてもらって、もっと頭を撫でて欲しい

そして、その優しい笑みと瞳を自分だけに向けて欲しい

昌浩や晴明でも同胞たちにでもなく、自分一人だけに



「(・・・まるで、母親を取られたくない子供だな)」


子供じみた考えに、ふっと自虐的に笑みを浮かべていると、無意識に紅蓮の腰帯を掴んでいた

それに気づいた紅蓮は、黒髪を撫でていた手を止める


「どうした?」

「・・・・」


紅蓮の問いに答えたくなくて、素早く狸寝入りをする

が、バレているらしく上からクスクスと声が聞こえてきた


「大丈夫、何処にも行かない」

「・・・・」

「だからおやすみ、玄武」


そう言って、止めていた手を動かし、また歌いだす



「(・・・騰蛇は解ってないだろうな)」


彼はきっと子が親に甘えているとしか思っていないだろう

仕方がない。彼は自分に向けられる好意には全く気付かない、超鈍感なのだから


「(早く気づかぬか)」


自分のこれは、子供が想うモノではないということを

でも今は、この優しい温もりを感じていよう



end
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