少年陰陽師
□温もり
1ページ/2ページ
○温もり
「静かに移ろう中で差し込む光♪」
暖かな午後の日差しが差し込む縁側で、玄武は紅蓮の膝を枕にしていた
低く優しい歌声に、一定の間隔で髪を撫でる暖かい手
そして何より頬から伝わってくる紅蓮の体温が心地良い
「隠した戸惑いさえも 照らすその微笑み♪」
玄武はこの時間が好きだった
誰にも邪魔されることなく、大好きな紅蓮に甘えることが出来るからだ
「時は流れても ここに確かな絆♪」
本音を言うともっと甘えたい
もっと一緒に居て、もっとぎゅっと抱きしめてもらって、もっと頭を撫でて欲しい
そして、その優しい笑みと瞳を自分だけに向けて欲しい
昌浩や晴明でも同胞たちにでもなく、自分一人だけに
「(・・・まるで、母親を取られたくない子供だな)」
子供じみた考えに、ふっと自虐的に笑みを浮かべていると、無意識に紅蓮の腰帯を掴んでいた
それに気づいた紅蓮は、黒髪を撫でていた手を止める
「どうした?」
「・・・・」
紅蓮の問いに答えたくなくて、素早く狸寝入りをする
が、バレているらしく上からクスクスと声が聞こえてきた
「大丈夫、何処にも行かない」
「・・・・」
「だからおやすみ、玄武」
そう言って、止めていた手を動かし、また歌いだす
「(・・・騰蛇は解ってないだろうな)」
彼はきっと子が親に甘えているとしか思っていないだろう
仕方がない。彼は自分に向けられる好意には全く気付かない、超鈍感なのだから
「(早く気づかぬか)」
自分のこれは、子供が想うモノではないということを
でも今は、この優しい温もりを感じていよう
end