少年陰陽師

□あやふやな存在
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○あやふやな存在



僕はあやふやな存在だった。

そこにいるけど、そこにいない。

存在しているけど、存在していない。

そんなモノだった。





僕は”次の騰蛇”になる存在だった。

けど、どういう訳か今の騰蛇が死んだはずなのに生き返ってしまった。

神将は死ぬと次の神将が生まれる。それが決まり。

それなのに、”今の騰蛇”が生き返った。

それでも、僕は生まれた。生まれてしまった。

”今の騰蛇”が死んだ事実があるから。
けれど、”今の騰蛇”が生き返ったのも事実。


どちらも現実に起きた事実。

その事実のせいで、僕の体はぼやけていたし、声も出なかった。

曖昧で不完全なモノ。

それが僕だった。









僕は異界の深い所に身を隠していた。

もし誰かに出会ってしまったら、不完全な僕は消される危険があったから。

ここなら誰もいないから安心だった。

なのに――。




「やっと見つけた」

『ッ!?』




後ろから声がかかり、振り向くとそこには”今の騰蛇”が居た。



『ッ!!?』

「そう、怖がるな。大丈夫、お前を消しに来た訳じゃない」

『??』



声は出ていないのに不思議と会話が成り立っていた。

困惑する僕に”今の騰蛇”は優しく微笑んだ。



「俺はお前を迎えに来たんだ」

『???』



迎え?誰を?僕を?




「・・・俺は一度死に生き返ってしまった。そのせいでお前をあやふやなモノにしてしまった」

『・・・』




確かにそうだけど、生き返ってまったのは”今の騰蛇”の意志でやった訳じゃないから、恨んだりはしてない。

でも、消えるのは嫌だ。



「俺はお前を消したくない。そこで、俺をお前の依代になろうと思う」

『!!?』



確かに、”今の騰蛇”を依代にすれば僕は消える心配はないけど、いくら同じ存在同志だからと言って負担が無いわけじゃない。

だけど、この申し出は嬉しかった。

僕は少し躊躇いながらも”今の騰蛇”の中へ入って行った。


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