混じり合った部屋
□馬鹿共が
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○馬鹿共が
朱雀の大剣が迫ってくる。
同胞の獲物が。神殺しの剣が己を貫くために迫ってくる。
「(嗚呼、死ぬな)」
そう確信した瞬間、音が無くなり周りの動きがゆっくりとなった。
「(昌浩達はちゃんと逃げられただろうか?)」
あの晴明は本人なのか?
もしかして、また性質の悪い嫌がらせか?まったく、そんなことばかりすると昌浩に嫌われるぞ。
あ、明日の朝餉は太陰の好きな甘めの卵焼き作るって約束してたな。
青龍と朱雀は甘いの苦手だからなぁ。仕方がない、別で作るか。
だけど――。
「(約束・・・守れるかな・・?)」
もうすぐ己を貫くであろう大剣の衝撃に備え静かに目を瞑る。
「ぐうぁ!!?」
が、大剣で貫かれる衝撃は無く、変わりに何かを蹴り飛ばした音と朱雀の呻き声が聞こえた。
驚いて目を開けると、目の前には己を守るように仁王出している、全身黒を纏った己と同じ顔をした違う世界の“紅蓮”が居た。
「こんばんはー、大元。一昨日の夢ぶり?」
「・・おっお前、どうしてこっちに?」
己では絶対にしない、にこやかな笑顔で挨拶してくる、あっちの“紅蓮”。
その“紅蓮”の突然の登場に三人は目を丸くし戸惑っていた。
「どうしてって、大元のピンチに掛けない訳がないでしょ」
それに――、と警戒をしている朱雀達を、まるでくだらない物でも見るような冷たい目を向ける。
「こんな簡単な事も分からない、救いようもない馬鹿共のせいで、大元に傷を作るなんて癪だしね」
「・・なんだと?」
“紅蓮”の言葉に三人がカッとなる。
「何なのよアンタ!騰蛇にそっくりなくせに、何者なのよ!」
「俺は俺さ。大元と同じ魂の形をした違う世界の“紅蓮”」
「違う世界の騰蛇?」
「・・まさかお前ら、世界が自分たちの居る世界だけだとでも思ってたの?」
まっ、大体がそう思っているんだけどな。
「そんなことより、お前ら。特にそこの神殺しの剣を持っているお前」
「・・なんだ」
「お前さ、こんな事して本当に救えるとでも思っているのか?」
「・・・・あぁ」
朱雀の答えに“紅蓮”は大きくため息を吐いた。
「バッカじゃねえの。て言うかクズだ、ただのクズ野郎だ」
「・・おっ、おい」(汗)
さすがに言い過ぎではと声を掛けるが、“紅蓮”は構わず続けた。
「愛しき者を守るため、主の命令だから?・・・・笑わせるな、そんなもの守るって言わねんだよ」
「「「ッ!!?」」」
何かを突かれた様に言葉が詰まる。
「それでもやるって言うなら、大元に代わって俺が直々に相手してやる」
“紅蓮”の神気が上がり黒いコートが生き物のように靡く。
「さぁ、来い馬鹿共。遊んでやるよ」
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