猫も杓子も、あなたに首ったけ。




ラクサス親衛隊、雷神衆のビックスローです。
今日は愛するラクサスと一緒にプールに来ました。
天気が良く暑い日です。
オレの頭も同じくらい暑く、ぐつぐつと沸いてます。
だって、今日は二人っきり。で、デートなわけですヨ。
しかもプールってことは、うっすい布一枚だけで下半身を隠してるだけってことですヨ!?
半裸ラクサス、濡れ濡れラクサス、びしょびしょラクサス…!!
これはもう手が滑ったって言ってボディタッチしても良いってことですヨネ!?
ああもう、イメージ映像だけで勃起しそう…。

「どこから行く?」

オレの妄想なんて露知らず、ラクサスは爽やかにオレに問う。
あぁ…邪でごめん。だけど、大好きなんだ。

「…ラクサスの好きなところからでいいヨ」

雷のマークの入った水着から、その美しくついた筋肉に目がいってしまう。
心此処にあらずでラクサスに返事を返せば、ラクサスは少し考えてから、頷いた。

「んー、とりあえず手近なとこから攻めるか」
「リョーカイ!」

浮き輪を手に、その白い肌を惜しげもなく晒すラクサス。
凛々しくて、格好良くて、完璧だ。
オレ以外の奴に見せたくないぐらいだぜ、ほんと。
プライベートビーチを貸切に出来るぐらい金があればなぁ…。
そんなことをぼんやりと思っていると、ラクサスのそばにふらりと人影が近づいてくる。
誰だとよくよく目を凝らせば、それは見覚えの有る人物だった。
そこには。

「セイバーの雷の人??」

「おお、ラクサスじゃねぇか!」
「…オルガっつったか?」

そうそう、オルガっつったっけ?
見るからにラクサスに気がありそうな危険分子!
オレは急いでラクサスとその男の間に体を滑り込ませ、にっこりと笑った。

「コンニチハ」
「おう。あんたは…誰だ?」
「ああ、こいつはビックスロー。オレの…」
「それよりよぉ。ここで会ったのもなんかの縁だろ? 折角だから一緒に遊ばねぇか?」

ラクサスのオレの紹介を途中で遮って、こいつは話を進める。
今、“オレの恋人”って言ってくれたかもしれないのに…!!
ふざけんなよ、こいつ…マジで。
っつーか、今日、オレらはデートだっつーの!
オレが口を開くよりも前に、この男はラクサスの体にべたべたと触れ始めた。

「つーか、すごい鍛えてるんだな!」
「アンタもだろ?」

ラクサスも褒められて嬉しいのか、男の体に手を伸ばす。
なんだこの状況。
筋肉質な男二人が体を触りあうって…!!
腕ならばまだ…本来なら断じて許せないけれど!まだ妥協はしよう。
胸はだめだろう。そんな揉むような触り方、オレがしたら雷が落ちるのに。
…女性にしたらセクハラになるレベルじゃないのか。

「ラクサス! オレ、流れるプールに入りたいナ! ほら、行くぞっ」
「あ、お…おう!」
「そんなら、オレも行こうかな」
「オレたち、このあとギルドのメンバーとも会うから悪いな! じゃあ、失礼するヨ!!」

ラクサスの手を握り締め、その場を後にする。
兎に角あのセクハラ野郎から逃げようと必死だった。
ちょっと振り返れば、ラクサスが不思議そうな顔でオレを見ている。
…だろうね。気付いてないよネ。
自分が同性から性的な目で見られてるなんて…。
オレのときですら気付かせるのに大変だったんだから。
他人のことには結構鋭いくせに、自分のことに至ってはまるで鈍感だからな。
握り締めた手にぎゅっと力を込めれば、ほんのりと赤くなる顔。
可愛らしいラクサスを見て、ちょこっとだけ心が落ち着いた。
出鼻はくじかれたが、今日はデート。
楽しまなくちゃ損だ。
気を取り直して、楽しもうと流れるプールに体を浸したときだった。
今度は、見覚えの有る坊主頭が前にいた。
ラクサスと相手が気付く前にそっと距離を置こうとしたとき。

「あれってよ…」

目ざとくラクサスは発見したらしい。
口ではなんだかんだ言いながらも、マスターのことが大好きなラクサスだ。
マスターの友人兼、拳を合わせた仲であるジュラさんのことを無視するわけが無かった。
挨拶をしないと、と自らプールを進み、声をかける。
まぁ…あの人なら安心かと黙って様子を見ることにした。

「おお、ラクサス君ではないか。また手合わせを願いたいものだな」
「こちらこそ」
「今日は遊びに来たのかな?」

ジュラさんの問いに、ラクサスはこちらを振り返って、はにかんだように笑った。
その表情の可愛いこと!
すぐさま駆け寄って抱きしめたかったが、そこは必死で我慢。
ラクサスたちをそのまま見ていると、ジュラさんは何を思ったか、そっとラクサスの頬に手を伸ばし―――…。

「…へ?」

右目の傷を優しくなでた。
そして、優しく微笑む。

「手合わせしたときには気付かなかったが、綺麗な顔をしておる。この傷がまた…良い」

ラクサスは一気に顔を赤に染める。
よたよたと後退してきたその体を抱きとめ、すぐに手で目元を隠した。
触れた体から、早い心音が聞こえる。
あぁ、もう…! やはり警戒しておかなくちゃダメだった。
だって、ラクサス、ジジコンだもん。
ギルダーツと並んで、ジュラさんもブラックリストに載せておこうと、こっそり心の中で思った。
まだ何かを言いたげだったジュラさんに頭を一つ下げ、その場を離れる。
木陰でラクサスに膝枕をしてやれば、少し落ち着いたようで、バツが悪そうに目をそらされた。
だから、オレも右目の傷を人差し指でなぞる。

「…お前は、見慣れてるだろ」

少し拗ねたような声を出したラクサスは、オレの膝から起き上がると、オレの機嫌を伺うように、上目遣いに視線をくれる。
その可愛い表情に免じて許してやろうと、ラクサスの額にキスしてやる。

「…なぁ、ラクサス。オレ…」

「あー! あれ、ラクサスさんじゃね!?」

オレがそっとラクサスの体に手を伸ばしたとき、わいわいと二人と二匹がやってくる。
そう、ナツとガジルにやたらと懐いていた、スティングとローグ、そしてそのネコ二匹だ。
なぜ、今日はこんなにも魔導士にばかり会うのだろうと、頭痛がしてくる。
オレが頭を押さえている間にも、スティングたちはラクサスに近づき、目を輝かせている。

「結局戦えてないんですよね! お願いします、今度オレと手合わせしてください! ナツさんから聞いたんですけど、すっげぇ強いんですよね!!」
「もしよければ、オレとも…!!」
「あぁ、いつでも相手になるぜ」

ナツと重なって見えるのか、ぽんと頭を撫でて、口角を上げるラクサス。
スティングたちは、新しく兄貴が出来たみたいで嬉しそうに笑っている。
ああ、なんて微笑ましい光景―――…。
けれど、後ろからまたオルガがやってきている。
もう一人、金髪の男。
ここで捕まったら多分もう逃げられない。
皆で仲良く遊ぶ展開になってしまうに違いない。
意を決し、オレはそっとラクサスの手を取り、明後日の方を指差す。

「あ、ナツにガジルだ!」

「マジっすか!? ナツさぁーん!!」
「ガジルだと!?」

二人がラクサスから離れたのを確認し、すぐにその場を離れた。
…だというのに!

「あれっ? ラクサスじゃねぇか!」

今度は本当に目の前に、ナツが現れた。
周りには、ハッピー、ルーシィ。
少し離れた場所にはガジル、エルザ、ウエンディ、シャルル。
そして、グレイにジュビアもいた。
鋭い視線を感じて、さっと振り返れば、鬼のような形相でこちらを睨むフリード。
そこからずっと奥のほうにはエルフマンとエバもいる。

「ま、マジかヨ…」

これはいただけない。
付き合い始めてからも、あまり大っぴらには公開していない関係だ。
今日はもう仕方ないと心で大きなため息をつき、また次にデートするときは気を付けようと諦めた。
名残惜しいが繋いでいた手を離そうとする。
けれど、それに気付いたラクサスは許さないというように力強く手を握り締めてきた。
驚いてラクサスを見れば、男らしい笑みを返された。

「ラクサス…?」
「ウォータースライダー」
「?」
「あれ、乗るぞ」

わいわいと皆が集まりだした中を、ずんずん進んでいくラクサス。
もちろんオレと手を繋いだままで。

「あの…、ラクサス…」
「あ?」
「手…」
「デート、なんだろうが」

前を歩く、大きな背中。
少しだけ見える耳が、ほんのりと赤くなっている。
なんともいえない嬉しさが込みあがってきて、オレは緩む口元をそのままに、繋いだ手に力を込めた。







「…今更なんだけどヨ。これ、乗り物に入る? 大丈夫か?」
「何も言うな。とにかく、こうしてろ」
「(抱きしめていいんだ!)!!」
「…よし、行くぞ!!」
「(あぁ、やっぱし、ダメなやつなんだ。コレ)…ラクサス」
「…あ?」
「帰ったら、お泊りさせてね。介抱、するからヨ」
「!」
「つーことで、ラブラブスライダー、出陣!!」
「…っ、ぅぷ、……ぉ、ぇ…!!」







(オルガ「あーあ、せっかくラクサスに会えたから、仲良くなろうと思ったのによー」)
(ルーファス「彼のことは記憶しているよ、神の子の様に美しい…」)
(スティング「ナツさん! 聞いてくださいよ〜!! ラクサスさんと勝負してもらえることになったんですよ〜!!!」)
(ナツ「先に言っとくが、ラクサスはオレのだかんな!」)
(フリード「雷神衆のだ!」)
(ルーシィ「なんか…すごい人気ね」)
(エバ「当たり前でしょ! 私たちのラクサスなのよ?」)
(ルーシィ「あれ? エルフマンは?」)
(エバ「!! べ、別に、一緒に来たわけじゃないの! たまたまなのよ!!」)

(ジュラ「…マカロフ殿が羨ましい。 …別嬪だった(噛み締める様に)」)




きっとスライダーを降りた後のラクサスはフラフラだろう。
脱衣場においてきたベイビーちゃんたちを持ってくることも出来ないし、そこらへんの浮き輪やビーチボールを拝借させて頂こう。
そんで、申し訳ないがナツたちをけしかけて、大騒ぎになっている間に逃げる。
それが一番だ。
また、FAIRYTAILの名前が悪い意味で有名になっちまうかもしれないけれど、恋人にべたべたされるぐらいなら、その方がまだましだ。
なんつったって、お騒がせギルド、だしな?

「       」

気持ち悪さに耐えるため、人目もはばからず、必死に縋り付いてくるラクサスを思いっきり抱きしめながら、愛を囁く。
ラクサスはえずきながら、力の入らないだろう手でオレの背に爪を立てる。
背中を一周、まるで円を描くように爪が走る。
この背中に描かれた“○”は、同意、ととっていいのだろうか?
嬉しさに浮上した心を後押しするように、くっついた体から早い心音が伝わってくる。
けれど、幸せな時間は長く続かないもので。

「うわっ」
「うぷっ」

ばしゃん!と大きな音を立てて、ウォータースライダーの終わりが来た。
ぐったりとしたラクサスの腕を肩に回し、腰に手を当てて、何とか立たせる。
その間にも、ギルド入り乱れての魔導士たちがラクサス目当てに集まってくる。
だから、オレは。

「頼むぜ、ベイビー?」

目視で確認した五つの玩具や浮き輪に魂を憑依させ、向かってくる奴ら目掛けて先手を打った。

















オマケ。


「なんか、まだ、気持ち悪ぃ…」
「ヒャハハ! 役得役得〜」

帰宅した後。
ソファに座り、気持ちが悪いといつもより甘えてくるラクサスが、死ぬほど可愛い。
よしよし、と頭を撫でてやり、キスをしてやる。
ナツたちがプールを破壊しているだろうことを考えると嫌な汗が出るが、それはもう明日、どうにかしよう。

「今日はずっと一緒だかんな〜?」
「ん。離れたら、許さねぇ」
「嬉しい命令だな。じゃあ、遠慮なくっ」

ぎゅっと背中から抱きしめる。
けれど、不服なようでラクサスは無理やりオレの腕をはがすと、くるりと回転する。
そして。

「こっちにしろ」

向かい合うようにして、抱き付いてきた。

「お、おう…」

あぁ…オレの理性よ。ガンバレ。
狼になるには、まだ時間が早いんだ。




…けれど、オレの小さな努力は、ラクサスから投下された爆弾によって簡単に吹き飛ばされた。




「なぁ、運動したら…少しは良くなる気がするんだが…?」

情欲を含んだ甘い低音が耳をくすぐる。
そんなお誘いをされて断れるはずがない!

「いただきますっ!」
「は、え!? オイ、待てコラ! オイィイ!!」



















「この、けだもの!」
「…え? マジで少し体動かして汗かくつもりだったの??」
「人の話聞け、バカが!!」
「でも、すっきりしたデショ?」
「っ…変態!!」















50000HITリクエスト企画に参加いただき本当にありがとうございました!
時間がかかってしまって本当に申し訳ありません…!!
リクエスト、≪男に好かれるラクサスのガードに忙しいビックスローなビクラクのお話≫ということで、頑張るビックスローを書いてみました!
主にオルガ君とジュラさんですね…。大魔闘演武の印象が強いからかもしれないです。
ラクサスはジジコンっぽいので、ギルダーツとジュラさんは最初からハードルが低そうですよね。
甘いこと言われたり、されちゃうとすぐ絆されそうです(笑)
ウォータースライダーでの囁きは、お好きな言葉を入れていただけたら楽しいかなと思いまして、空欄にしました*^^*
お好きな甘い言葉を入れて、楽しんでいただけたら幸いですv
それにしても私は、吐きそうになっているラクサスが好きみたいです(笑)
乗り物がダメって、滅竜魔導士は大変ですよねぇ…。
ビクと二人っきりで移動の時は、プルプル震えながら必死にしがみついていてくれたら最高です(*´ω`*)v
絶対そういうの表に見せないタイプだけど、ラクサス…!!
楽しいリクエストを頂き、ありがとうございました!
いろいろ妄想できて、すっごく楽しかったですv

長くなりましたが、少しでも気に入っていただけましたら幸いです…!
この度はリクエストを頂き、本当にありがとうございました!!
このお話はかいこ様のみのお持ち帰りでお願いいたします。

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