みじかいの
□爽やかな夏を迎える
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卒業してからもう3年も経つというのに。
高校の部活の集まりが定期的に行われている我が男子バレー部は今日もまた集まっていた。
自分が卒業して3年ということは、可愛い後輩だった1年も卒業を迎えていて、今ではもう部員全員が大学生か社会人だ。
「…なのにすごい集まりの良さ」
「右に同じ」
同い年で当時主将だった****がわたしの隣で返事をした。
それぞれ仕事やバイトがあるはずなのに集合率100%なんだからそう思わざるを得ない。
しかもほぼ毎回だ。
隣にいる彼もまた、今ではサラリーマンで。
もう見慣れたスーツ姿も、さすがに似合っている。
「うおー!まだまだやれるな俺ら!」
「ほんとですね!先輩スパイクすげー!!」
そして尚且つ、本日の集まりは****の提案により体育館。
久しぶりにこのメンバーでバレーができると聞いたみんなのLINEの反応ったらそれはもう。
当時と変わらずテキパキと体育館を予約をとった****には昔と同じで頭が上がらない。(わたしがやるよと言う前に終わってるんだもんなあ、完敗)
あちらこちらでボールの音が聞こえる。懐かしい。
ほんの数年前まではこの光景が日常だったのに。
****と同じようにスーツで動く部員もいて、よくもまあそんなに俊敏に動けること。
うん、かっこいいじゃないか。
「元気があってよろしい」
「***も混ざってきたら?」
「わたしはマネージャー。こうやって外から見てるのが楽しいし当たり前だったからね」
****こそ、うずうずしてるのバレバレだから早く行きなよ。
相変わらずわたしの隣で部員たちを眺めている****の目がキラッキラしているのはだいぶ前から気づいていた。
なのに行こうとしない****に溜息を吐いて肩を叩いたら、その肩がバレーをしていた昔よりも逞しくなっているのがわかって、また違う意味で溜息を吐く。
「でも、少しは動かないと寒いかなあ」
昼間はだいぶ暑くなってきた今日この頃だけど、夜になると昼間とは違ってだいぶ冷える。
仕事帰りだったわたしはカーディガンを羽織っただけの薄着で少し身震いをした。
そんなわたしに、自らが着ていた上着を脱いでわたしの肩にかけた****に気付いて見上げれば、ほんの少し赤い頬と頭を掻く仕草。
ああ昔と変わらない。照れている証拠。
「***の隣に立ってあいつらに指示出すことも、コートに立ってバレーすることも、俺にとってはどっちも同じくらい日常だったよ」
だから今ここにいる。違和感は全くない。
そう照れながらも芯の通った声で言う****が目が反らせないのは、今も昔も変わらない。
「そっか…」
「うん」
「わたし、****の隣にずっと居られるかなあ」
「居られるよ。ってか居てくれなきゃ俺が困る」
爽やかな夏を迎える
(ナチュラルにいちゃつくよなあ、あの2人)
(俺らのこと見えてないんじゃないですか?)
(そんなの前からだろ)
(早くくっつけばいいのに。何年もじらしやがってあいつら)
某少年バレー漫画を読んだらハマりましてその産物です。ぐふ
気に入って頂けたらclap★
お題配布元:
15/05/12 千春