■ Book

□パラレルクロクラ
2ページ/2ページ

いつもそう。

おまえが「仕事」に行くときは私を一人にしていく。

アジトで待つことを許してくれない。

賑やかな街の中にひっそりとたたずむ古本屋で待たされる。

「0時過ぎても俺が帰って来なかったら、そこのホテルの部屋を借りて寝ろ。絶対に本屋とホテル以外には行くなよ。」

そうやって「仕事」に行く。

おまえの「仕事」を私は知らない。

でも。

帰って来たおまえは
血の匂いがする。

何をしてきた?

怖くて聞けない。

そのときいつも、私の中にあるなにかが悲鳴をあげる。
「返してくれ」と悲鳴をあげる。

私はおまえに何かを奪われたことがあったのだろうか?


古本屋におまえが迎えにくる。
気付くと、雨が降っていた。


「ただいま。クラピカ。」


「おかえり。
今日は遅かったな」

「うん、ちょっとね。なにか欲しい本はあった?」

「いや、今日は特にない」

「そう。じゃあもう帰ろうか。」

「ああ。」

おまえの大きな手を握る。

この古本屋の店長らしきおじいさんがこちらを見ていた。

一言も言葉を交わしたことはないけど、目があうと優しく笑ってくれる。

今日もお客さんは私だけだったな。



「今日はどんな本を読んだんだ?」

「盗賊とハンターが戦うという話だ。ファンタジーぽかったけど、どちらも実在するんだよな、くろろ。」

「・・・ああ。おまえは、どっちがかっこいいと思った?」

「もちろんハンターだ。」

「・・・結末はどうなった?」

「ハンターの一人と盗賊の一人が恋に落ちるんだ。だけど、最終的にはハンターが盗賊を倒した。」

「・・・そうか。」



なぁくろろ。
私がこの物語を忘れることは
きっとないだろう。


あ、血の匂い・・・
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ