■ Book
□Bitter Kiss(ヒソクラ+ちょいレオクラ)
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気付くと走り出していた。
唇に残るあの甘さを消さなければ。
忘れなければ。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
私はしばらく走り続けた後、街の大きな道路に面したお菓子屋さんの前で立ち止まった。
お菓子屋のウィンドウに手を付いて体重を預け、呼吸を整えた。
まだ荒い息が零れる唇を、そっとなぞってみた。
さっき、レオリオからいきなりキスされた。
本当にいきなり。
私のことが好きだと、私のことを守りたいと言いながら抱きしめられた。
だけど私は彼の胸を押し返した。
私は甘えてはいけない、一人で強く生きていかなければならないのだから。
そう言って走って逃げて来た。
(キスってあんなに甘い・・・のか。)
相手が相手だからだろうか。
とろけそうなほどの甘さが今も鮮明に蘇る。
駄目だ。
あの甘さは忘れなければいけない。
ふと、ウィンドウの中に並ぶ甘そうなお菓子が目に入った。
ケーキにこれほどかというほどのチョコレートが乗っていて、さらにそのうえにこれほどかというほどの砂糖がかかっている。
私はお菓子屋さんの扉に手をかけた。
喉が焼けるほど甘いお菓子を食べよう。
そしてあの甘さは忘れてしまおう。
そのとき、背後から私の知っている声がした。
「クラピカ?」
私は驚き振り返る。
「・・・ヒソカ。」