百人一首 恋歌でパロ

□忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな
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先日、私は彼の浮気現場を目撃した。

それはそれは可愛らしい女の子と歩いていた。

私、知ってるのよ。
その子、雪村千鶴ちゃんでしょ?

ただの同僚なんて、嘘なんでしょ?
ただの同僚とそんなに親しげにホテルなんて入っていくはずないものね。

天罰が下ってしまえばいいわ。



付き合いたての頃は、毎日のように私に会いに来てくれた彼。
元々、女関係でいい噂は聞いてなかったから、ちょっと見直した。

けれど、それも束の間。

会いに来る回数はだんだん減り、メールをしてもほとんど返ってこなくなった。



『ねぇ、明日の外食のことなんだけど…』

「わりぃな。明日会議入っちまって、遅くなりそうなんだ。
…この埋め合わせは今度必ずする。」

『そう…』


ドタキャンは、しょっちゅうのこと。

“この埋め合わせは…”
なんて、何度聞いたことやら。



私、知ってるのよ。
本当は会議なんてないってこと。

原田さんから聞いたんだから。


…バレてないとでも思ってるの?
いや、彼にとってはバレようがバレなかろうが、何も変わらないのかもしれない。


せっかく聞き分けのいい女を演じていたのに。

彼に迷惑はかけられない。
そうすれば簡単に捨てられてしまう。

…そう思ってたのに。


けど、違った。
私がそんなことしなくても、彼はいつでも私を捨てることができたのだ。


でもいいの。
貴方が私を捨てられるように、私だって貴方を捨てられるんだから。



「こんないい女をほったらかしなんて、さすがは土方さんだな。」

『あら、今は貴方が一番よ…原田さん。』


そう言って私は、彼の唇に自分のソレを寄せた。






(私が忘れ去られるのは、どうでもいいのです。)
(それより、永遠の愛を神に誓ったあなたが罰せられて)
(命を落としてしまわないか、心配でなりません。)

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