白兎と冷酷人間
□1つの過程
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「指輪のしくみがわかった。」
『……え?何の指輪ですか?』
ノブナガさん達と夕飯の取り合いをしていたら、いきなりクロロさんに話し掛けられた。いいよねー、クロロさんはいつもパクノダさんに取ってもらってるんだからさ!
餃子を食べながら首を傾げれば、いきなり正面から手をガシリと掴まれた。
(この嫌な予感は…)
「ならこの指に付いてるもの、切り落としやるね。」
『イヤァアアア!ちょ!フォークで刺そうとしないでください!』
サッと避ければ、机に突き刺さるフォークと盛大な舌打ちをフェイタンさんからお見舞いされた。
『てかすっかり忘れてました。きっとクロロさんの事だから、新しい欲しい物見つけてとっくに忘れているかと…』
「フェイタン、こいつの指、切り落とせ。」
『大変申し訳ありませんでした。』
ガバッと謝れば、そのうちに私の卵焼きを取るシャルくん。
(取る時の速さは神業だったのは賛美しよう。)
『あぁ!私の卵焼き!!』
「指輪の事、調べてあげたお礼って思ってよ。」
『随分安上がりなお礼で済みますね。』
今度いっぱい働いてもらうからいいよ、なんて笑顔で言われたけど無視した。
『…で何がわかったんですか?』
「それがお前の指輪はペアで出来ているそうだ。」
『ペア…?え、じゃあもう1人居るんですか?』
可哀想に、何て会ってもいない人に同情してみるけど、もしかしたらその人は幸せにしてるかもしれない。何で私こんな事になっちゃったんだろ……。
「それにその指輪には法則があるみたいだな。」
『法則?』
クロロさんに聞きながらも私は食べる手を止めない。だって止めたら一瞬にして私のご飯がなくなる。相手は盗みのプロなんだから侮れないんだよ。
「お前の指輪は光を表している。対になるのは闇。陰と陽と言ったところだ。」
『ほう…。』
自分の指輪を見れば確かに白だし、光と例えられるのもわからなくもない。
「そしてその指輪は引き合わせる。つまり互いに居た同じ世界から連れて来られる。」
『次元を超えた磁石みたいですね…。でもどうしてそんな事がわかったんですか?』
「時々そういう事が起きてたみたいだよ。それでその時の指輪所有者が残した文献に載ってたんだ。」
苦労したよ、なんて言ってるシャルくんだけど、やっぱり彼の情報収集は本当にすごいと思う。
「そしてもう1つ。その対の指輪所有者はもうこの世界に居る。」
『…え、目撃情報が…?』
「いや、ない。だが闇の指輪が行った世界に、光の指輪は引き合うそうだ。」
て、事はつまり…
『私と同じ世界に居て、そして今こっちの世界に居る…?』
頷くクロロさんに、どうやらみんなも夕飯を食べ終わったようで、話に耳を傾けている。
「まあ時期にわかるがな。」
『どうしてですか?』
「一般人なら目撃情報があるだろうし、ルカみたいな人だったらこの頃出てきた噂でわかるよ。」
『噂ですか…。てか何で最近なんて言い切れるんですか?』
「その指輪は半年の間に対の指輪の所有者が現れなければ、強制的に元の世界に返されるからだ。」
『随分自分勝手な指輪ですね。』
違う世界に飛ばしておいて引き戻すなんて都合のいいこと全くだ。呆れたように言えば、クロロさんは嫌な笑みを浮かべる。
こんな笑みの時はろくなこと考えやしない。
「対の指輪の持ち主、気にならないか?」
『気になりません!』
すごく気になるけど、ここで頷いたら絶対いい事なんてないに決まってる。
「そうか、俺は気になる。」
『私に対しての質問は何だったんですかっ!』
「愚問だな。ただの気まぐれだ。」
『……。』
自分の持っていた箸がバキッと折れる音がした。ついでに机もミシリなんて悲鳴が聞こえたけど、知らないフリ。
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