白兎と冷酷人間
□頑固者と意地っ張り
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「あれ?フェイタンは?」
『居ないんですか?』
キョロキョロ周りを見ても確かに居ない。でもフェイタンさんが打ち合わせに遅れた事なんて滅多にないから珍しい。
「あ?フェイタン居ねぇのかよ。」
『!!う、ウボォーさん落ち着きましょう!!』
そうだ、ウボォーさんは時間にはうるさいんだ。この間、フランクリンさんとノブナガさんが遅刻して殴られてたけど、死ぬんじゃないかってほどフルボッコだった。
だからと言ってフェイタンさんが大人しく殴られるかと言ったら…ノーだ。
「ルカ、お前が呼んでこい。」
『えぇぇ…。何で私が…。』
「いいのか?ウボォーに仲良く殴られ『行ってきます!』あぁ頼んだ。」
何が頼んだ、だ!行かせる気満々だったくせに。
でも私は時間が惜しいので、この間初めて行ったフェイタンさんの部屋へダッシュした。
(あぁもう!フェイタンさんのアンポンタン!)
『フェイタンさーん。……あれ?』
ノックをしても静まり返る空間。
え、もしかしてのお留守?いやいやそんな事はない。
『フェーイタンさーん!ウボォーさんに殴り飛ばされちゃいますよー!』
だが出てくる気配なしだ。何という事だ、このままでは私まで死亡フラグが立ってしまう。
仕方なく扉を押したら……開いた。
『か、鍵がかかってない…。』
恐る恐る入れば、物騒なものが沢山置いてある薄気味悪い部屋は変わらずだ。だが部屋の主が居ない。
キョロキョロ探せば、奥の部屋から何か落ちる音がした。確かあっちは寝室じゃなかったか…?
『は、入りますよー…。』
まだ入ったことのない未知の部屋の扉を開ければ簡単に開いた。
全く生活感のない部屋にフェイタンさんらしいと思ったが、ベッドに視線を巡らせれば布に何かくるまってるものが落ちてる。
近付けばそれはフェイタンさんだった。この人寝てるの初めて見た…。
だが様子がおかしい。触ってみればかなり熱い。
『だ、大丈夫ですか!?フェイタンさん!』
「…うる、さいね…。」
『うわわわわ…!す、すみません…!』
「…黙れ…。」
息遣いの荒さにいつものように言葉に殺気がない。後者はそれが本当は普通なのだが。
てかかなり熱高くないか?
『い、今誰か…!…フェイタンさん…?』
「言たら…承知、しないよ…。もう、集まてるか…?」
『あ、はい。…じゃなくて!何どっか行こうとしてるんですかぁ!』
フラフラと立ち上がったら、まるで某ホラー映画のテレビから出てくるの女性の如く、危うい足取りのフェイタンさん。慌てて手を掴めば、病人とは思えないほどものすごい勢いで睨まれた。
(ヒィイイ!こ、怖いよ…!)
「離すね!!お前、殺されたいか!!」
『こ、殺…!?い、嫌です!!』
「なら離すね!!」
『それも嫌です!!…って、フェイタンさん!?』
崩れ落ちるように倒れるフェイタンさんをとっさに支える。そしてベッドへ横にすれば、また睨まれた。だけど今は全然怖くない。
「お前には…関係ないね…。」
『そ、それは…。!か、関係ありますよ!!だってフェイタンさんは私を疑っていて、監視役なんですから!』
ほらありました!と言う私だが、理由が虚しすぎる。
でもフェイタンさんは諦めてくれないようだ。
『ぅ〜…。わかりました!打ち合わせには私が言い訳しておきます!!だから夜中までちゃんと休んでいてください!それまで私が看病します!』
「そんなの『じゃないとクロロさんに言いますよ!!』……。」
何分睨み合いをしただろうか。いや、実質は一分も経ってないかもしれない。
するとフェイタンさんは溜め息をついてベッドにボフッと身体を預けた。
「ならととと話聞いてくるね。」
『!!…はい!』
私は一旦自分の部屋に戻ってタオルを持ってフェイタンさんの部屋に行き、濡らしたタオルを額に置いたら少し表情が和らいだ。
私はそれを確認して広間に戻れば、ウボォーさんがイライラしてた。
『ご、ごめんなさい!』
「あれ?フェイタンは?」
『フェイタンさんは…寝てます…。』
「あぁ!?」
今すぐ殴り飛ばしに行こうとしているウボォーさんを慌てて止める。今のフェイタンさんだったらウボォーさんは殺しかねない。
『あの!ちゃんと訳があって…!』
「話してみろ。」
『えっと…、実は…この間あげたクッキーに何か入ってたみたいで…。』
クッキーをあげたのは本当だ。パクノダさんと一緒に作ってみんなにあげたから。
でもそれじゃあ、私とパクノダさんが毒を盛った事になってしまうじゃないか。今更ながら後悔した。
「そういえば…途中でマチとシズクも居たよね…?」
『え?はい。』
すると真っ青になるシャルくんに、心なしかみんな表情がよくない。
「フェイタンは…無事なのか…。」
『あ、夜中のは参加するみたいです。』
「そうか…。」
とにかく何とかバレてないみたいだ。良かった良かった…。
その後みんなの表情が少し良くなかったけど、その理由は分からずじまいだった。
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