白兎と冷酷人間

□怒った兎
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私の両親は優しくて笑顔が綺麗なお母さんと、あんまり会ったことなかったけどお父さんはすごく強くて夜兎族ではかなり有名だった。


「いい?ルカ、あなたは夜兎の血に負けちゃダメよ?」


そんな私のお母さんもすごく強くて有名だったけど、争い事を好まない人だった。だからよく小さい頃はずっとこんな事言われていた。


『どーして?私も強くなりたい!』

「強くなるのは…いい事よ。でも血に負けちゃダメ。」

『私、お母さん守るの!!だから強くなるの!!』


そう言うと、いつも嬉しそうに笑ってくれた。


「ルカは誰かを守る為に強くなりなさい。怒りや血に従って、力を奮ってはダメよ。」


この時は本当によくわからなかったけど、あの時わかっていたら今の私は居たのかな。





『…てまぁ、考えてもどうにもならないよね…。』


走馬灯のように昔の事を思いふけても私はちゃんと生きてますから。
とっさに番傘で防いで、爆風と少しの爆炎で身体はちょっと怪我したけどまぁ大丈夫だ。


『いたたたた…。』


うわー、頭から血が止まらないよ。……あれ?


『帽子とネックウォーマー…が…な、ない…。』


嘘、どこにいった。爆風で吹き飛ばされたのか。
煙が晴れてきてキョロキョロ探せば、少し離れた場所に落ちていた。周りが唖然としている間に取ろうと思い、あと少しというところで顔からすっころんだ。
(今のは鼻血出たよ、絶対。)


「ば、化け物!」

『ギャアアア!ま、また手が…!』


だが敵は錯乱したのか銃を乱射してくるので、とっさに身体を捻って避ける。
でもそれがいけなかった。私はすっかり忘れてたんだ、帽子とネックウォーマーの存在に。


『あ…!』


でも気付いた時には遅くて、手を伸ばしてあと少しの所にはボロボロになった2つ。でも諦める事なく手を伸ばせば、目の前から消える。いや、目の前に来た男の人にとられた。


「そ、そんなにこれが大事か?」

『返して…ください…!』

「なら取りに行けよ。」


ポイッと投げられた方を目が追っていく。そしてさっきの爆弾で燃えている炎に飲み込まれた。
それを怯えながら馬鹿にするように笑い出す男の人達。でも次の瞬間、遠くで聞こえた爆発音に驚いている。
あぁ、作戦が始まったのか。


『…けるな…。』

「な、なんだよ!?」

『ふざけるなぁあああああ!!!』


前の男に番傘を心臓目掛けて投げれば、見事に的中して崩れ落ちるように倒れた。そして、それと同時に両足を掴んでいた手がなくなった。


「ひ、ヒィ!目が赤くなっ…!」


最後まで言う前に手で首を跳ね飛ばす。
さっきの衝撃で外れなかったカラコンが外れたならラッキーだ。でも今は喜ぶ気になれない。


『ひ弱な人間のくせして…。』


ただあっけなく死んじゃうくせに。
小さく呟いた声は銃を打つ音と叫び声で消された。また1つまた1つ、聞こえていた声が消えていく。あっけなく、簡単に。


『ねぇ、何でそんな簡単に死んじゃうの…?』

「ぐ…ぁ…!」

『ねぇ、どうして?』


こうやってちょっと力を強くしただけで、力無く死んでしまう。本当にちょっとなのにさ。


『どうしてそんなに簡単に壊れちゃうのさ…。』

「ち!近付くなぁ!!」


撃とうとした銃口を捻って、その人物の前にしゃがむ。


『私の大切なものは簡単に壊すくせに、簡単に壊れるなんて卑怯だと思わない?』

「ぅ…ぁ…。」

『別に撃てばいいよ。でも先に壊れるのは人間のあなただよ。』


ガタガタ震えながらこちらに向けて銃はなかなか撃たれない。私はイラついて、近くに落ちていた銃を掴む。


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