ちゃいるど!!
□旅団と私
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私はこちらの世界に来て、沢山人が居る部屋にいきなり現れた。そしてそこでディオンに会った。何も知らない私は、何も教えられる事もなくただ私の居た世界の話をしたら、異世界から来た事に結論付けられた。
そこからは地獄だ。よくわからない薬を飲まされたと思ったら、何か注射されたり。ただ痛みに耐えて、何時の間にか治っていてまたその連続。今思えばあれは念だったんだろう。拷問のような日々だった。
そして何の副作用かわからないけど、それで身体能力と視力がよくなったんだ。だからと言って逃げられるわけなく、諦めていた時に誰かが逃がしてくれた。名前は教えてくれなかったけど、あの人の念で記憶喪失になって身体が縮んだ。それで逃げた先があの流星街。
「起きるね。」
バシャッとかけられた水にむせながら、無理矢理取られる目隠しに一瞬目をつむる。ソッと目を開ければ、フェイタンさんにフィンクスさん、シャルさんにマチさん。
『起きてますよ…。』
身体を少し動かそうとすれば、マチさんの念糸が絡まっている事に気付く。グッと念糸を持つマチさんは悲しみを消すように、唇を噛んでいるように見えた。シャルさんだって悲しみを耐えるような表情だ。フィンクスさんとフェイタンさんは見た事もない程に不機嫌だ。
『私、これから拷問されるんでしょうか?』
「っ…ユナ…次第だよ。」
『私に答えられる事でしたら。』
力弱くなってしまった笑みにシャルさんは顔を背ける。私はあなた達にそんな表情をさせる為にこんな事したわけじゃないんだ。
「なんで…ディーラを殺そうとしたんだよ…。」
『魔眼のディオン、シャルさんなら知っているんではないですか?それが彼の正体…』
「嘘はダメね。あいつ、ワタシら小さい頃からディーラね。」
ガッと首を掴まれて表情を歪めれば、フェイタンさんは更に機嫌悪そうな表情をする。
「フェイタン、そんなじゃシャルが質問出来ねえだろうが。」
「…チッ。」
『ゲホッ…。とにかく、ディーラがディオンなんですよ…。』
「俺が……裏切り者の言う事を聞くと思う?」
裏切り者
そう、私は今裏切り者なんだ。どうしてこうなったんだ。私は本当に生ぬるいなぁ…。
俯いて頬に伝うのは涙なのか雫なのかわからない。だけどこのままでは彼らは…
『死にます…よ…。』
「あ?どういう事だ。」
『あなた達、仲間内で殺し合いをしますよ…。もう一度、思い返してください。あなた達はこれまで一緒に居たと思うディーラの記憶に違和感は一切感じな……っ!?』
左手から強烈な痛みと共に言葉がつまる。視線をそちらに向ければ、フェイタンさんがナイフで私の左手を刺していた。
「お前…いちいちうるさいよ…。シャル、やぱりこいつ身体に聞くのが一番ね。」
「それは団長から禁止されているだろ?」
『…クロロは…?』
「教える義理もないね。」
確かにそうだ、私は今裏切り者扱いされているんだから。
するとガチャリと扉が開いたと思ったら、パクさんが入ってきた。目があった途端、そらされてズキリと心が痛んだ。
「団長が呼んでるわ。」
それだけ言うと、次々出ていくみんな。チラッとマチさんが私の方を見て、私の左手を見て少し悲しそうな表情をして部屋から出て行った。
あぁ、私は本当に何をやってるんだ。確かに彼らにとって私は小さな存在だが、蜘蛛の存在は彼らを支えているもの。それを彼らの手で壊した後、生き残った人はどう思うのだ。
だけど私は今助けられない。こんなはずじゃなかったのに。全ては私の甘さが招いた結果だ。
そんな事を思っていれば、また扉が開く音がしてそちらに顔を向ければ意外な人物に目を見開く。
「やあ生きてるかい?」
『ちゃんと表情が動いているのを見て、それを言わないでください。』
「案外元気そうじゃないか」
『…そう、見えますか…?』
今にも零れそうな涙をそのままで笑えば、ヒソカさんは機嫌悪そうな表情をする。
『あなたの性格なら人の負の表情を喜びそうなのに意外ですね…。』
「…君にそういう表情は似合わないね何時もの毒舌はどこに行ったんだい」
『あんたはドMか。』
困ったように笑えば、ヒソカさんは溜め息を吐いてこちらに近付いてくる。ちゃんとマチさんの念糸を避けてるがまたムカつくけど。
「助けあげようか?君1人攫ってここから消えるなんて簡単な事さ」
『…それをしてあなたのメリットは?』
「……。教えない」
トランプで遊びながら答えるヒソカさんにイラつきながらも溜め息を吐けば、顎をクイッと上に向けられヒソカさんと目が合う。本当にこの人の考えている事はよくわからない。だけど1つ道が開けた。
『ヒソカさん、交渉しませんか?あなたが前に出した私への交渉。』
「死ぬ気かい?」
『自分だけ生き残ってこれからも幸せに、なんて甘さが今の現状を生んだ。なら覚悟するべきだ。』
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