ちゃいるど!!
□崩壊と彼女
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「これがそうか。」
「うん、間違いないよ。」
ある美術館に入った俺達は、俺とシャルで今回の欲しい物を手に入れた。
後ろから悲鳴と共にドシャリとした音がして、視線だけ移せばパクとフェイタン。
「どいつもつまらない奴ばかりね。」
「美術館にそんな強い奴はいないに決まってるだろ?」
シャルの言葉に舌打ちをするフェイタンは、つまらなさそうに転がっていた頭を蹴っている。どうやらかなり楽しめなかったそうだ。
「マチ達もそろそろ来るそうよ。…それが“真実の鏡”なの?」
「あぁ。」
手に持っている鏡を見てみれば、綺麗に施された装飾以外別段と変わらない鏡。
「ワタシら、いつも現実しか見てないよ。そんな念がかかただけのものいらないね。」
「確かに。」
「俺も興味はないさ。だが気になる事があってな。」
弧を描く俺の唇にシャルとフェイタンとパクは3人で顔を見合わせているが、その疑問に答えてやるつもりはない。
すると衝撃音と共にフィンクスとマチが現れた。
「あ?…なんだ全員居るんじゃねえか。」
「だから言っただろ?早く行くべきだって。」
「さすが眉なし、ノロマね。」
「あー!もう、ケンカしない!」
シャルが制すれば、お互い舌打ちして終わる。ケンカする程仲がいいとはまさにこいつらの事だろう。
そこでシャルは思い出したように携帯を取り出した後、どこかに電話をかけるがどうやら相手は出なかったらしい。
「もう寝ちゃったのかな?」
「ユナの事かい?」
頷くシャルについ笑えば、睨まれてしまった。
「団長だって気になるくせに。」
「どうだかな。」
そんな会話をしていれば、外が騒がしくなってきてる事に気付く。
「もうここに用はない。退くぞ。」
「ん…?」
アジトに向かって帰っていると、広間から3つの気配に気付く。
2つはウボォーとノブナガ、もう1つは…
「あれ?ユナ起きてたのかな?」
「さあな。」
アジトに着いて、ドアが壊れてたのは大方あの2人が壊したのだろうと思い、別段気にしなかった。だが中の様子でそれは嫌な予感に変えた。
「だ、団長!!」
大の大人2人が情けないほどオロオロしている図はかわり笑えたが、2人の陰に居るユナの気配に疑問を覚える。真っ先に迎えてきそうなやつが何故今になっても動こうとしない。
そんな事を考えていると、マチとパクが目を見開いてユナに駆け寄っているのが視界に入った。
「ユナ!どうしたんだい!?」
「あなた何でそんなに濡れて…」
変な所で言葉を区切るパクに疑問を持ちながらユナに近付けば、頭からびっしょり濡れて床にしゃがみ込みながら俯いている姿。だがそれだけではない。
「ユナ。」
声を掛けるとピクリと肩が震える。目線を合わせるようにしてしゃがむが、視線は合うことはない。
「それはどうした。」
そのワンピースと床にある血はどうした。
すると片手に持っていたナイフがスルリと手からこぼれ落ちる。確かあれはパクが持たせたナイフ。そこでふと先ほどの事を思い出す。
俺達がアジトに帰る途中、道の真ん中に堂々とあった死体2つ。死体など見慣れているものだが、刺し傷はあったのに周りに血はなく、まるで何処か違う場所で殺されたかのような錯覚にもなった。
あれは…もしかすると…
『すみま…せん…。』
今まで黙っていたユナが呟くように言った言葉は、今にも消えてしまいそうな程。
『少し…色々あって…。』
「あの2人を殺したのはお前か?」
ヨロヨロと立ち上がるユナに聞けば、不自然な程ピタリと止まる動き。隣でマチが睨んでいたが、気にする事ではない。
『どこに…ありましたか…?』
「アジトの途中だ。」
答えとは言えないが、その返答はユナがやった事を意味するに十分な言葉。
『私…最初、隠れて様子見てたんです…。』
忠実に言いつけを守ろうとした行いだ。だがこいつは時々…
『でも、クロロの部屋と…ノブナガさんが持ってきたものを、触られそうになって…何時の間にかそいつらの前に居て…。』
考えるよりも行動が先に出る癖がある。
それはたぶんこの場に居る奴らは知っている事だからこそ、今回のユナの行動に疑問を持たないのだろう。
『でも、ちょっと気を抜いたら…殺されそうになって…また念が暴走しそうになって…そしたら…。』
俯きながら自分の両手を見るユナは思い出したかのように震えだした。
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