ちゃいるど!!

□涙と彼女
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ユナが俺にあんなに意見をしたのは初めてだった。
だがこの頃物がいきなり消えたり現れたりするのは、俺が原因ではない。大方、ユナが無意識に使っている念能力だ。
多分本人も薄々気付いているはずだ。あの場で謝らなかったユナがいけない。


「団長ー、また電話鳴ってるぜ?」

「あぁ、そうだな。」

「珍しいね。団長がこんなしつこい女を生かしておくなんて。」


確かにな、と笑うウヴォーに珍しいものを見るような目で見てくるマチ。
携帯を開いてみるが、やはりかかってきてたのはユナから。仕方なく携帯の電源を切るとシャルがため息をついた。


「団長…、ユナからでしょ?出ないの?」

「ユナって、誰だぁ?」

「団長の拾ってきたガキね。」


なるほど忘れてた、と納得するウヴォーにフェイタンはため息をつくのを横目で見る。
今回はそんな面倒な所ではない。だからマチとフェイタン、シャル、ウヴォーを連れて来た。まぁウヴォーはこの頃暴れてないから来ただけだが。


「昨日から鳴ってるのに可哀想じゃん。ずっと鳴りっぱなしなんだから、ユナ寝てないんじゃない?」

「じゃあ団長はその子とケンカしたの?」

「ケンカじゃない。あいつがやった事をしらばっくれるからだ。」

「どうせまた物がなくなったんでしょ。あれはユナのせいじゃないよ。」


不機嫌そうに言うシャルに、珍しく他人の話に耳を傾けているフェイタンを見て、こいつらもユナを気に入ったのか、と心の中で笑う。


「とにかく今はレインボーダイヤが先だ。ユナを気にし過ぎて死ぬなよ?」

「そんなヘマしないよ。」


ムスッとしながら答えるシャルに、微かに笑いながら目の前の屋敷を俺達は目指した。












「まぁ、色んな意味でこっちがヘマしたね。」

「そうだな。」


確かに侵入は簡単に出来た。そこまではいい。
だが目当ての物は、用心棒として雇われた奴らに目の前で取られた。マチが針を咄嗟に投げ、それを追っていけば俺が今住んでいる街の隣町だった。
全くどういう因縁だ。
あとの奴らはどこ行きやがった、と苛々しているウヴォーの声と、フェイタンが拷問している用心棒の1人の絶叫が木霊してそれ以外の音はまるで俺達が去るように収まっている。
いきなり静かになった空間に、フェイタンの拷問が終わった事が物語る。


「どうだった?」

「あとの奴ら、たぶんこのあたりに隠れてるね。テレポートの能力者の誓約は3時間につき一回しか使えないよ。」

「ほぅ…。ならあと2時間以内に探せ。ダイヤが盗れれば、殺せ。」


それが合図のように散り散りに探し始める。
自分も探そうかと思った瞬間だった。聞き慣れた声が聞こえた気がして、表通りに視線を移すがやはり居るわけがない。
あいつがわざわざ俺の約束を破るような事はしないはずだ。

そう自分に言い聞かせるようにして、その場から離れた。








「団長、縫合終わったよ。」

「あぁすまなかったな。」

「今はパクが看てるよ。かなりの高熱でうなされてるみたい。」

「そうか…。」


あのあとシャルから連絡があり、先ほどの場所へ戻ればユナの帽子があった。
何故こんな所にと思っている自分とは別に、もしかしたら、と考えたくもない事態が思い浮かんだ。


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