ちゃいるど!!
□恐怖と私
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「ユナ、いい加減認めたらどうだ。」
『だから私じゃない。』
目の前に居るクロロとの睨み合いが始まったのは30分前…
「おいユナ。」
『どうしたの?』
振り返れば珍しく怒っている様子のクロロが居て、私は疑問に思った。
「俺のこの間買ってきたプリンと古書どこやった。」
『…?知らないけど。』
あれは限定品のプリンにまだクロロが読んでない本。そんなものを私はどうこうするわけないし、むしろ機嫌の損ねる真似は私は一切してない。
「…お前、あのプリンと古書に触ったか?」
『確か…冷蔵庫に入れる為と、机に置いておくのには触ったよ。』
「やっぱりな…。…ユナ、俺に言う事はないか?」
『ないよ。』
「………。」
『………。』
それから冒頭のような状況だ。
何で私がクロロに謝らなくちゃいけないんだ。
そもそもいつも買ったものをその辺に置いておくほうがいけないはずだ。
「ユナ、俺はお前が来る前までいきなり物が消える事や、目の前に現れる事はなかった。」
『…だから今回消えたのも私のせいだと。』
「そうだ。それ以外に考えられるか?」
確かに私がここに来て、能力が分かってから起きた現象だ。なら私が原因と考えるのが妥当だろう。
だが、何となく私と決めつけられるのに何故かこの時は嫌だった。
『だからって私って決め付けないで。そもそもクロロがいつも買ったもの置いておくのがいけないんでしょ?』
「俺の物だから気にしなければいい。」
『ならいつもクロロは常温に戻った腐ったプリンを食べる事になってたよ。』
「……ならまた買ってくればいいだろう。」
『それでまた腐らせるの?』
「………。」
『……。』
「……なら古書はどこだ。」
『知らない、私に聞かないで。』
するとまた静まり返る空間。だがいつもと違うのはクロロがかなり怒って睨み付けてる事だ。私は無視してまた本に目を移す。
「…お前と話しても埒があかない。」
『は…。え、どこ行くの?』
ジャケットを着ながら何処かへ行く支度をしているクロロに話し掛ければ、冷たい視線を送られて身体が固まる。
「物には関係ない事だろ。」
バタン
玄関が閉じる音はやけに響いた。
そして今頃になって顔が青くなっていく。
どうしよう、私かなり大変な事を言った気がする。だって私がやったというのが定かじゃなくても、これは謝ったほうが良かったんじゃないか。
私はこの間シャルさんに貰った携帯でクロロに電話をかける。
『……。』
が、やっぱり出ない。もう一度かけてみるが出ない。
私のアドレスにはシャルさん、パクさん、フィンクスさん、そしてクロロしか入っていない。だがこれはクロロと2人の事だ。他の人には迷惑を掛けられない。
とにかく定期的に電話をかけて待ってみる事にした。もう一度本に目線を戻したが、内容は全く頭に入ってこなかった。
ツーツー
『………。』
あれから一夜明けた。私は繋がらない携帯に耳を宛てたまま。あれから何度も電話をかけた。だが途中から電源を切っているのか繋がらなくなった。
『どう、しよう…。』
前にシャルさんが団員は色々な所に住居を持っていると聞いた。特にクロロは多く持っているようで転々と移動している、と言っていた。もし、もしかしてだが、違う住居に移転していたら…?
『…っ!!』
底知れない恐怖が一瞬にして私に襲ってくる。震える身体を自分で抱きしめるようにするが、なかなか収まってはくれない。
そうだ、クロロはあの時“物”と言っていた。所有物ではなく物と。もう捨てられたのか?あれはそういう意味だったのか?
『クロ、ロ…。』
呼んでも居るわけないのに呼んでしまう。だがやはり返事はない。
私は捨てられたのだろうか。
何故あの時1人で出歩くな、と言われていても探さなかったんだろう。
何故素直に謝らなかっただろう。
後悔してももう遅いのはわかっている。
だがわかっていても私の身体は玄関を飛び出していた。
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