ちゃいるど!!
□存在と彼女
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ユナと出会ったのは偶然に近いだろう。その日何となく思い出して、何となくその本が読みたくなって、何となくアジトに向かった。
全ては俺の気まぐれで気分だ。
そしてその偶然の中ユナに会った。
最初は何か弱々しい気配が感じて、このあたりをよく知らない奴が迷い込んだのだろうと思っていた。きっとこの気配では放っておいても直ぐに死ぬ。
アジトに入ればやはり人が居た。だがそいつの取り巻く空気があまりにもここには似合わない、まるで無垢な何も知らない純粋そのものだった。
だからこそ異様だと思いながらそいつと目が合えば、黒い髪を揺らしながら余りにも綺麗に笑ったので驚いた。
だから少し興味が湧いて、なるべく怖がらせないように話し掛ければ弱々しいが言葉遣いも礼儀もなっている賢い子供だった。
だからこそ何故こんな場所に居るのか気になった。ここは欲しいもの盗って、殺される前に殺されなければならないそんな場所だ。
だからこそ、本を素直に渡された事にも驚いた。盗まないか聞けば驚いた表情をする。
親は居るのか聞けばいない。ならば、俺が拾おうが別に構わないだろう?
目の前で衰弱して気絶してる子供を見て、暇つぶしが出来た事に微かに口角が上がった。
「ハァ…。」
目の前で先ほど気絶した少女、ユナは今はベッドで気持ちよさそうに眠っている。
最初はただの暇つぶしで拾ったものが、今はどうやら愛着が湧いてきてしまったようだ。
確かに面倒も掛けない、頭の回転もいい、飲み込みもいいが、俺は幻影旅団だ。きっといつか邪魔になる。
なら殺すか?捨てるか?…出来たならもうとっくにやってる。
ユナも俺に捨てられるのが怖いのか、時々伺うような表情をする。だが確かにそこに嫌悪感は芽生えてこない。
ならばどうするのか?
『ぅ…。』
「起きたか。」
『ぅ…ぁ…クロロ…。』
ボーっとしている抜けた表情につい笑ってしまう。するとユナは目を見開いたと思ったらガバリと起き上がり顔を真っ青にする。
『わ、私!変な奴に…!』
「あぁ、もうあいつは居ない。」
『そ、そっか…。』
ホッとしたようでユナの肩の力が抜けるのがわかった。
あいつとは出来れば俺も会いたくない。だが絶対に今回の事でユナは目を付けられただろう。
『そういえば私、不本意だけど念使えるようになったんだよね…?』
「あぁ、そうだな。明日から念のトレーニングだ。」
『え、何時ものトレーニングは…』
「やりたいなら別に構わないが。」
そう言えば、ユナは勢いよく顔を横に振る。この頃こいつは前よりも子供らしさを見せるようになった。少しは慣れたからか?
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