ちゃいるど!!
□正体と私
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綺麗に汚れが落ちていく感覚。こんなにもお風呂に感動したのは始めだ。でもまずはそんな事よりも…
『クロロ=ルシルフル…って…。』
私の記憶が正しければ、友人が半ば強制的に押し付けてきた漫画で、中学1年生くらいの男の子がお父さんを探しにハンターってものになりながら、色々と困難に立ち向かう話の途中に居たはずだ。そう、なんかの偉い人。なんだっかがどうも思い出せない。でも主人公の仲間が戦っていたから、たぶんその漫画では敵なのか…?
とにかくわかったのはここは日本ではなく、私は異世界に来たようだ。とんだ笑い話になれたらどんなに嬉しいか。
つまりは帰れない。帰り方がわからない。
『っ…。』
これからどうすればいいのか。今はいいが飽きられたらまたあの生活か?
想像しただけで身体は震えてくる。
私が一番しなければいけないのはあの人に飽きられないようにする。でもどうやって?
堂々巡りだ。どうすればいいなんて、私はわからない。全てはあの好青年、クロロ=ルシルフにかかっているのだから。
『お風呂…ありがとうございます…。』
「あぁ、気にするな。……やはりブカブカか…。」
苦笑いするクロロさんに目に映るのはきっとブカブカなYシャツを照る照る坊主のようにして着ている姿だろう。滑稽だ、あまりにも滑稽だ。
「もうすぐすればちゃんとしたものが着れるからな。」
『え?それはどういう』
意味か、と聞こうとしたところにインターホンの音が鳴る。
するとクロロさんは確かめる事もなく玄関を開けると、そこには胸元が大胆に開いたスーツを着た女性が居た。
え、私邪魔者?
「すまないな、パク。」
「大丈夫よ。それより、あなたが拾いものなんて珍しいわね。」
そんな事を話ながら2人は部屋に入ってきて、私は目が合うとギクッと身体を固まらせる。
すると女性は目線を合わせるように、しゃがんで頭を撫でてきた。
「そんな怖がらないで。何もしないわ。」
『あ、はい…。』
「あなたはどこに住んでいたの?」
『それは…』
わかったなら、言えたなら、どんなに楽なのだろう。
俯きがちでいれば、目の前の女性は目を丸くしたと思ったら抱きしめてきた。
「ごめんなさいね。今のは忘れてちょうだい。」
『気にしないで…ください。』
泣きそうになる私に目の前の女性はまた頭を撫でた。
「私はパクノダよ。よろしくね。今日はあなたの服を持ってきたの。着てくれるかしら?」
『パクノダ…さん…。あ、服ありがとうございます。』
「いいのよ。ちょっと着替えてみる?」
『はい!』
そして私は渡された袋を手にして脱衣場に早歩きで行く。ダッシュしたかったが、そこはなけなしの理性が何とかストップしてくれた事に本当に感謝した。
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