白兎と冷酷人間

□危険なおつかい
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朝起きたら、隣の部屋からフェイタンの気配がなかった。あれ?昨日寝る時にはあったはずなの気配がない。てか気配に気付かないで寝てるなんて、どれだけ私は油断してるんだろ。…フェイタンだから油断してるんだろうな。
着替えてリビングに行けばやっぱり居なかった。そして朝食を作る為に冷蔵庫を開けて、あ、と言葉を零す。


『杏任豆腐がなくなってる…。』


食べたのはフェイタンなことは確か。だけど食い意地がはってないフェイタンが、昨日作っておいた4つの杏任豆腐を全部食べてるとはかなり嬉しい事だ。
流しを見れば4つの容器と1つのスプーン。やっぱり1人で食べたんだ。私の分も食べちゃってるし。


『まあいっか。』


自分の朝食を作りながら杏任豆腐をまた作る私。我ながら偉いと思う。
今日はアジトに行かなきゃいけないからなぁ。てかクロロさんがわざわざ呼ぶなんて、プリン関連以外の事を願う。プリンの事ならパクさんに任せて私には任せないで欲しいです。
食べ終わった食器を洗って、杏任豆腐を容器に入れて冷蔵庫へ。行く支度をしたら、傘を持ってフェイタンの家から出た。
暫く日の当たらない道を歩けば、大通りに出る。そこは日が当たるので仕方なく傘を開く。本当に地球は住みづらい。でも嫌と思わないのは私を仲間としてくれる人達が居るからだろうな。クロロさんが慈善活動で仲間にしてくれなきゃ、絶対になかったし。……今日くらいはクロロさんの理不尽にも付き合ってあげよう。
そんな事を思いながら歩いていけば、廃墟ばかりのところを抜けてアジトが見えてくる。


『おはよーごさいます。』

「お、ルカじゃねぇか!フェイタンとは仲良くやってるみてぇじゃねえか!」

『あ、ウボォーさん!………て、フェイタン居ないと思ったらここに居たんですか。』

「ワタシがどこ居ようとかてよ。」


まあそうだけどさ。ぐるりと広間を見れば、クロロさんにシャルくん、ウボォーさんにフィンクスさんにシズクちゃんにパクさんにフェイタン。資料らしきものを持ってるところから、どうやら今回の仕事のメンバーらしい。


『パクさん、シズクちゃん!おはようございます!』

「誰だっけ?」

『……!!』

「嘘だよ、忘れるわけないじゃん。」

『シズクちゃんだからシャレになりません。』


酷いなー、なんて言うシズクちゃんに微妙な表情をしてれば、今回の目的であるクロロさんに呼ばれる。さあ…プリンなら作って


「お前にはお使いを頼む為に呼んだ。」


作って……あれ?


『お、お使いですか…。』

「ああ、相手からお前に指名だ。」

『ちなみにどんなお使いですか?』

「相手から渡されたものを持って帰ってこい。」


あ、なんだ結構簡単だ。そう考えたのがわかったのか、クロロさんなニヤリと笑う。


「ちなみにイルミの家だからな。」

『嫌です。』


即答した私にクロロさんは更に笑みを浮かべた。だってあの屋敷でしょ?イルミさんって暗殺一家なんでしょ?嫌だよそんなの!この場所以上に危ないよ!


「そうか…残念だな。今回俺達の任務がやりやすくなると言うのに。」

『………。』

「あると此処に居る奴らがすごく助かるんだがな。」

『……ぅ…。』

「…仕方ない。シャル、計画変更だ。一般人であろうと全て殺『やりますやります!行きますよ!!』…行きます…?」

『っ!行かせていただきますー!!』

「そうか。ルカがそんなに言うなら…行ってこい。」


勝ち誇ったように笑うクロロさんの顔にプリンを叩きつけてやりたくなった。プリン食べ過ぎて腐ったプリンにあたればいいんだ。そして寝込んじゃえ!


「なら今から行ってこい。金はこちらで出す。お使いの金は後でやる。」

『…準備だけしてきます。』


アジトの部屋にあるので準備はすませちゃおう。転がっていた石を蹴ってやったら、思いの外威力がすごくてアジトの壁に穴が空いてしまった時、微妙な空気が広間を支配したのは私のせいじゃない。
逃げるように広間から出て自分の服が置いてある新しい私の部屋に行く。前の部屋は爆弾でも仕掛けてあったのか、と思うほどの様だからさ…。


『本当にクロロさんは口がうまいよね…。あれだったらホストとかになれば絶対いいよ。…あ、それならシャルくんもそうだ「なにブツブツ言てるか。」…あれ?フェイタン?』


キョロキョロ見ても此処は私の部屋。うん、フェイタンの部屋ではないよね。ならどうしたんだろ?


「いつ帰てくるか。」

『え?たぶん…3日もすれば…。』

「そうか。……早く帰てきてあれ作るね。」


あれ………あぁ、杏任豆腐の事か。どうやら杏任豆腐が心配でフェイタンはここに来たらしい。類は友を呼ぶって言うけど、フェイタンもクロロさんと変わらない気がする。でもクロロさんほど重度になってほしくはない。


「早く帰てくるね。」


また繰り返すように言った言葉は私になのか、杏任豆腐の為にかはわからない。でも何となく私に言われている気がして、自然に笑みがこぼれる。


『はい、頑張ります。』


早く帰って、フェイタンと沢山お話しながら杏任豆腐を食べよう。


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