ちゃいるど!!

□弟子と私
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「よし、今から別行動だ。」

『…………。は…?』


この人何を言い出すんだと思えば、また本当に突飛な事を言った。弟子から外されたわけではないと思う。


「いやな、実は俺、今から会う約束しててよ。そいつ、人間嫌いな奴なんだ。」

『…それで別行動ですか。何時まででしょうか?』

「3日だな。3日後にまたこの山の所な。」


その言葉に頷いて、早速私も準備をする。3日くらいは町で情報を集めるとしよう。今は初夏。そう、もしかしたら由宇が言っていた事が起こる可能性のある季節に近付いているのだ。でもどうやって蜘蛛の事を調べよう…。そういえば前にシャルさんの仕事を手伝った時に、ハンター証があるから便利などと言っていた。


『あの、ハンター証って何ですか?』

「あ?それはハンター試験に受かった奴に渡されるもんだな。」

『あぁ…ハンターですか。…て事はジンも持ってるんですか?』


もし持っているならば貸してくれないだろうか。ハンター証があれば調べものが楽になる。そして蜘蛛の事も少しわかるかもしれない。


「持ってるぜ。あ、でも今はない。」

『…はい…?まさか…なくしたんじゃないでしょうね…。』


確かあれは再発行不可能なものだったはず。なくしたらこの人、まさにニートまっしぐらじゃないか。だがジンもやはりそれは違うようで、否定された。


「今はカイトが持ってる。カイトが居ないとハンター証はねえぞ。」

『本当に嫌な事してくれますね…。もう私は行きますね。』


少しでも期待した私が馬鹿だったんだ。着替えとジンの仕事を手伝った時に貰ったかなりのお金を持って立ち上がれば、ちょうどジンも支度が出来たようだ。


『無駄な心配だと思いますけど、道中気を付けてくださいね。』

「ありがとよ。ユナも油断すんじゃねーぞ。」

『気を付けます。』


そして2人ともその場から地を蹴る。仕方ない。地道に情報を集めるとしよう。
山を降りた町でホテルの一室をとって、そのあたりを散策してみる。まずは新聞を買って情報収集をしよう。
そんな事を思いながら歩いていれば、ジンから貰った携帯が鳴り出した。まあ携帯に入っているアドレスはジンしか居ないのだから、鳴るとしたらジンだけだろう。
内容は、“やっぱり4日後で頼む。すまん。”という事だ。まあ仕方ないだろう。わかりました、と送って歩いていれば腕をいきなり掴まれて、掴まれた方をゆっくりと振り返りながら睨み付ける。振り返った先には、帽子を被った長髪。たぶん骨格からして男。


『…何でしょうか。』

「それ、どこで手に入れた。」


視線を辿れば、由宇がくれたネックレス。もしかしたらこいつはコレクターか何かなのだろうか。面倒な事になった。


『友人から譲り受けたものです。』

「!…なんだと…?」


いきなり驚きの表情を浮かべる彼は何を思ったのだろうか。とにかく油断はしてはいけない。彼はかなりの念能力者だ。そしてそれは私以上の力量。


「彼女は…今、どこに居る…?」


彼女。今この男は彼女と言った。私は友人とは言ったが、性別までは教えていない。なら、この人は由宇を知っているのだろうか。…少しカマをかけてみよう。


『私が彼女から譲り受けたのは、彼女が使う前です。』

「…!なら…お前は由宇の世界の友人か?」

『…やっぱり由宇の事を知っているんですね。はじめまして、由宇の親友のユナです。』


ぺこりと頭を下げれば、男は少し表情が和らいだ。彼女や由宇と言った時に、今の表情。きっと彼は由宇にとって有害な人物ではない。なら私にも害はないだろう。


「いきなり引き止めてすまなかった。俺はカイトだ。」

『え…。』


ひくりと頬が一瞬引きつった私にカイトさんは首を傾げる。ああ、ジンと旅していて世界は広いと思ったが、それは全く違ったらしい。


『申し遅れました…。カイトさんの妹弟子となるものです。ジンからはよく話を聞いています。』


世界は案外狭いものだ。


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