ちゃいるど!!

□弟子と私
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「それでユナは今あの人のところに居るのか。」

『そうです。でもまさかカイトさんと会うとは思ってもいませんでしたよ。今もジンを探しているんですか?』

「あぁ、僅かな目撃情報を辿っても、居ない事ばかりだ。」


困ったように笑うカイトさんは、本当にジンの弟子なのかと疑う程、全く違う。まあ師弟が似ると決まってるわけではないので私の予想ミスだ。
私とカイトさんはあの後、私が今日泊まるホテルでお茶をしながら由宇の事やジンの事を話した。カイトさんはどうやら由宇の念能力を鍛えた人物らしい。


「なるほどな…。それで今ここに居るのか。」

『まあ新聞くらいしか今のところ情報がありませんし、パソコンはデマ情報が混じっているのであまり信用出来ないです。』

「なら俺のハンター証を貸してやる。…1日しか貸せないが…。」

『え…いいんですか…?』

「あぁ、俺もちょうど宿を探していた。だからさっきここのホテルに予約をとったから好きに使っていい。」


はい、と渡されたカードを見て、シャルさんをふと思い出した。早く、みんなの事を…。
何回もお礼を言う私に、カイトさんは笑いながら返すのは明日の朝食の時でいいと言ってくれた。まだカイトさんと話していたいが、調べるのにかなり時間がかかるだろう。カイトさんもそれを察して、夕食後はすぐにお互い部屋に戻った。備え付けのパソコンを起動させて、ハンター証を差し込む。


『電脳ページ…。』


本当に懐かしい。シャルさんは特別だよ、と言ってよくいじらせてくれた。探すではなく、めくる、と言う事や調べられない人物が居るなど細かく教えてくれたのはクロロ。思い出しただけで目頭が熱くなっていく。早く、早く探さなきゃ。
カタカタと打つのは蜘蛛の事。


『A級賞金首…ね…。』


出てきた情報はごく僅か。A級賞金首であり、盗賊、そして詳細不明。まあ予想はしていたが、これはかなり困った。情報屋では蜘蛛の事でも億単位のお金がとぶ。個人となれば更に跳ね上がるそうだ。そんなお金は持っていない。
詳細不明なのはみんなは盗む事に対して徹底しているからだろう。完璧な情報に完膚なきまでにする強奪。そして仕事が終われば、その場からすぐに消えてしまう。簡単にわかるわけない。

仕方なく普通のインターネットで調べてみるが、これもまた予想通り。ただ書いてある事がでっち上げだったり、架空の話だったり。だって、リーダーが魔獣ってどういう事だ。
だけど1つだけ気になるものを見つけた。それは蜘蛛にターゲットにされた美術館の話だ。夜しか見れない宝石を見に来たお客は惨殺。だが黒髪の女性や子供だけは殺されなかったらしい。まあそれに対するコメントが、みんな黒髪にすればいいのか!?、というしょうもないものだったが。


『……まさかね…。』


そう、まさかの偶然だ。きっとクロロの気まぐれにより生かされたに決まってる。彼ら蜘蛛は時々、気まぐれを起こす時があるんだから。

ふと今日買った新聞に目を移す。経済や誰か芸能人が結婚しただの、どこかの国でデモが起きただの記事は様々だ。世界のどこかで今この瞬間、幸せになった人もいれば不幸せになった人も居る。はたまた、新しい命が誕生したとおもえば失った命もある。それらに喜びを感じる人も居れば、嘆き悔やむ人も居る。
ならどれが犯罪になり、どれが救済になるのかもわかったものじゃない。上に立つ人はそれを決める。クロロは蜘蛛の上に立つ者。だからこそ彼は彼なりの決まりで行動しているのだ。
そんなクロロを慕う私は悪なのか善なのかは誰が決めるんだろう。

パラパラと見ていく記事にふと目が止まる。“またも美術館襲われる!真相は誰なのか!?”そんな題名を見て、これを悲しむ人もいれば喜ぶ人も居るんだろうな、と考える。


『誰かではなく…自分…。』


そう、誰かが決める価値ではなく自分の価値。もしクロロが悪で私の気持ちも悪と言う人が居るからって、それはその人の価値。結局は善悪なんて人それぞれなんだ。ましてや自分の気持ちなんて。
なら私の気持ちは善と思おう。それならば、蜘蛛とクロロは私の中で善となるのだから。



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