白兎と冷酷人間
□嘘吐き攻防戦
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『く、くくくくクロロさん…!さ、さっきプリンをフィンクスさんが食べてましたよ!』
「そうか、だからさっき俺はお前のケーキを食べたぞ。」
『えっ…!な、何でそんな事するんですか…!』
「嘘に決まってるだろう。」
『なぁ!?』
「お前はここに何しに来たんだ。」
哀れむような視線で見てくるクロロさんに私はもう何だかよくわからない気持ちだ。ただ言えるのは、悔しいを通り越して悲しい。
『何でですか…。さっきシャルくんに会って私が口を開く前に「ほらなんて吐いたら、今すぐに配線コードで首締めるからね。」…シャルくん。』
「だってさ、もう分かりきった事されてもウンザリなんだよね。あ、ルカの傘、さっきウボォーが間違えて折っちゃってたよ。」
『ウボォーさんなに「嘘に決まってるじゃん。」……。』
「何でさっき団長に騙された直後に騙されるのかな。てかどうしてそんなボロボロなの。」
『強化系の皆さんに、美味しい食べ物が広間にあるって言ったら、真相を言う前にみんな行ってしまって…。』
「だからあいつら急いで広間に来たのか。」
『でも嘘ってわかったら…返り討ちに…。』
「丸め込みなよ。」
『…出来ると思っていますか?』
「ううん、全く。」
なのに提案したところが本当にシャルくんは真っ黒だ、色々と。もうエイプリフールなんて嫌いだ。パクさんとマチちゃんとシグクちゃんは、嘘吐くのが申し訳なくて直ぐに謝っちゃったし…。3人はやっぱり嘘だってわかってたし…。
「あ、なら一番そういう事に疎い奴に言ってみたら?」
『強化系以外に居ませんよ…。』
「…ああ、1人居たな。お前がどもっても可笑しくない相手だ。ほら、来たぞ。」
クロロさんの視線を辿って行けば…フェイタンさん…だと…?どうやらあの怪しい本を持ってるところから、広間で読書をする気だろう。いやいや、フェイタンさんに嘘を吐く…?バレたら…
『私、確実に死んじゃいますからぁあ!』
「バレなきゃいいんだよ。」
『いや、無理、無茶です。まず成功してもシャルくん辺りがバラして、私の命が終了するだけです。』
「……そんな事ないよ。」
『嘘ですね。』
とにかく行ってこい、と言わんばかりなクロロさんの視線に泣く泣くトボトボとフェイタンさんの前に行く。
どうしようどうしようどうしようどうしよう…!
『あ、あの…。』
「…何ね。」
『……えっと…』
「ととと言うね。」
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!
ああ!フェイタンさんの眉間にシワが段々とぉおお…!
「お前…殺され『わ、私…!フェイタンさんの事大好きで大好きで仕方ないです!』……は…?」
『そ、そそそ素っ気ないですけど優しいところとか!だだだだだ大好きです!!』
「……。」
い、言えた…!何とか言えた!………はて、私は何と言ったんだっけ?
ハッとフェイタンさんの方を見れば、何故か固まっていた。そう、固まっていたのだ。そして何時もこのあとは、にんまりと凶悪的な笑みを浮かべてジワジワと痛めつけられるか、ハンパなく不機嫌になってボコボコに痛めつけられるか…。
ヤバい、これは命の危機だ…!
『ご…ごめんなさいぃいいいい!!』
私は猛ダッシュでその場から逃げた。とにかく逃げないと明日の朝日が拝めないぞ!拝んだ事ないけれど!!
「フェイターン?」
「……。」
「おい、フェイタン。」
「……。」
「これかなりヤバいんじゃない?」
「あぁ、ルカが逃げて後で謝って自爆する事を予想する。」
「うん、俺も。」
そしてシャルくんとクロロさんの予想は当たって、翌朝私の悲鳴がアジトを木霊したのだった。
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