ちゃいるど!!

□約束と私
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「じゃあセシルまた来るからな。」

「はい、また来てくださいね!」

「なら頼むから家に居てくれ。」

「…善処します。」


ジンは諦めたように溜め息をつく。あのジンまで自分のペースを崩させてしまうセシルはかなりの強者だろう。ジンが出発したのをあとに私も出発しようとした時、セシルから声をかけられた。まさかかけられるとは思ってもいなかった。


「ユナさん、これあげます。」

『これ…忘却草の香水?』

「つけている人には効力ないですけど…。ユナさん、逃げる事も大事何ですよ。」

『え…?』

「ユナさんは…どこか何時も自分を何かと比べたりしてます…。そんな自分を苦しめないでください。」


ギュッと握られた手を驚きながらセシルを見れば、優しく微笑む。


「私は…蜘蛛は…怖いです…。もしもユナさんが蜘蛛と繋がりがあるならば、それは仕方ないと思います。でも私の中のユナさんは、何時までもお姉さんのようなユナさんです!」


近くで見たセシルの顔はあの白い肌に微かに隈ができていた。この子はあれからずっと考えていたのだろうか。こんな私の臆病な質問に一生懸命考えて…自分の正直な気持ちを伝えてくれた。


「またユナさん暗い表情してますよ。私が一生懸命考えたのはユナさんだからなんですから!そんな申し訳ないような表情をしないでください。」

『そうだね…。セシル、ありがとう。私は本当にセシルを妹のように思ってる。』

「!ありが…とう…ございます…!」


ポロポロとセシルから流れる涙はとても綺麗に思えた。私はこの子と会って本当によかった。旅団のみんなと一緒で、私の世界を広げてくれた。感謝がしきれない。


「私ですね!ちゃんと伊賀の方と話してみます!あの方々、無闇に傷つける事はしないですから。これは、ユナさんの強さを見て決心したんです!」

『私…?』

「ユナさんは確かに体術などは強いです。でもそれ以外にも強さがある事を忘れないでください。」


笑顔で言うセシルに私は聞こうとしたが、「秘密です」と言われて先を越された。
私の強さとは何だろうか。まあ自分を嫌悪している内は絶対に見つかる事はないだろう。


『香水大事使うから。また来るからね、セシル。』

「はい!!その時には、一緒にジャポンを回ってください!」


頷いて、本当に今度はお別れだ。大丈夫、私はまたここに来よう。その時は全部終わってからだ。クロロ達に会ってから、またセシルに会いに行こう。
少し走った先にはジンが待っていた。


『待っててくれたんですね、ありがとうございます。』

「それもあるけど……一応用心だ。」

『昨日の事もありますから仕方ないですよ。』


昨日の夜、セシルに手を伸ばした時に感じた微かな視線はやはり間違いではなかったようだ。「気付いていたのか」と気まずそうに言うジンに頷けば、何故か謝ってきた。


『あれは私が悪いですから。一番セシルのタブーな部分を言ったんですから。』

「でもおかげでセシルは変わったぜ。いい方向にな。」

『それは過信ですよ。』

「素直に喜べ。」


なら素直に喜んでいる私が想像出来るか、と聞いたら謝られた。やはりこの男、かなり失礼だ。移動しているなかでわざと足を引っ掛けようとすれば避けられた。


「なんかお前素早さがかなり上がったな。」

『ありがとうございます。』

「…なあ、お前の会いたい奴って…。」

『……秘密です。秘密が少しあった方がいい女になるんですよ。』


するとジンは少し驚いた後に、笑い出した。全くこの男は何だと言うんだ。
何時の間にか着いた山の麓から私とジンはあの桜のある商店街に向かった。


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