白兎と冷酷人間

□始まった新しい生活
1ページ/1ページ



『おおおおお邪魔します!』

「何してんだよ。」

『い、いえ…私今思い出したんですけど、前の世界で一度も誰かの家に遊びに行った事なくて…。』

「どんだけ箱入り娘なんだよ。」

『家というものに住んでる人が知り合いには少なかったんです。』


だって私の知り合いなんてみんな宇宙船に住んでるし?ごくわずかに地球人居るけどさ…。
するとノフナガさんまでもが変な表情でこっちをみてきた。


「お前…可哀想な奴だな…。」

『仕方ないじゃないですかー!地球人には知り合いはごくわずかですし…。』

「そいつの家行けば良かったじゃねえか。」

『…だって…家が警察署だったり家がなかったり、フラフラ放浪しててわからないし…泊まれるわくないでぇ!?』

「うるさいね。」

『ちょ…本当に痛いです…。てか今投げたの私の荷物…。』


それを無視してスタスタ自分の家に入っていくフェイタン。投げた荷物はフィンクスさんが持ってくれたからよかったけど、落としたりしたら大惨事だった。
緊張しながら入れば、何とも殺風景な部屋。リビングらしき所はソファにテーブル、冷蔵庫にテレビ。キッチンは…使ってないようだ。


『あれ?食器とかは…?』

「そんなものないに決まてるね。」

『なら私ご飯作れないんですけど…。てか包丁とかは…。』

「ナイフならあるよ。」

『いや違いますから。』


冷蔵庫を見れば、やっぱりビールだけ。え、何?もしかして明日色々買い物しなきゃいけないの?食材に食器に料理器具に…私1人で大丈夫かな…。アジトにあったからって油断してた。


『…とにかく明日買い物に行きます…。』

「そちの部屋使ていいね。」


指差すほうの扉を開ければ、ガランとした部屋。あれ、物置なんじゃ…。


「随分すっきりしたなー。」

『前には何があったんですか?』

「……。フェイタンに聞け。」


パッとフェイタンを見れば、にんまり笑みを浮かべられた。これは絶対に聞いちゃいけない。て事はこの部屋、なんか曰く付き…?


『な、何にも出ませんよね!?何も出ないですよね!?』

「そんなのワタシに聞くんじゃないよ。」

『!!お、お二人共今日は泊まっていきましょうよ!泊まってください!』

「そんなのワタシ許さないね。」

「あー…フェイタンもああ言ってるしな…。」

「悪ぃな…。」


どうしよう。フェイタンの家に住むのもドキドキだったけど、まさか部屋に居る事もドキドキなんて予想外過ぎる。本当にどうしよう。そんな真っ青な表情の私を置いて、ノフナガさんとフィンクスさんは玄関のドアに手をかけている。


「フェイタン、頑張れよ。」

「何を。」

「自分の心に聞いてみろ。」

「………。」

『あの!ほ、本当に帰っちゃうんですか!!』

「正直になれよ、フェイタン。」

「うるさいね…。」

『無視しないでくださぁああああい!!!』


涙目でフィンクスさんに抱きつけば、フェイタンが後ろから引っ張ってきた。足が地面に着いてないから首がしまる…!
しばらくしてパッと手を離されて、咳き込んでいればノフナガさんが心配してくれた。


「明日よぉ、団長とパクが来てくれるみたいだから我慢しろ…。」

『クロロさんは面白がって来る気ですね…!』


くそぅ…酷いよクロロさん。前から酷いけど、本当に酷いよ。そしてついに2人は帰ってしまって、フェイタンと私だけになってしまった。
もう色んな意味で心臓がパニックだ。


『き、今日の夕飯はどうしますか…?』

「寝る。」

『寝る!?食べないんですか!!』

「うるさい。」

『すみません。…あ、じゃあソファ借りてもいいですか…?明後日マチちゃんがベッドくれるみたいで…。』


無言で部屋に入ってしまったフェイタンは、うん肯定とみなそう。黒のソファに横になって部屋をボーっと見る。やっぱり緊張はするし、あの部屋は怖いし…。これからやっていけるのかな。
そっと目をつむりながら考えれば、フェイタンが部屋の扉を開ける音がした。そして何故かソファの前、つまり私の前でピタリと止まった。もしかしてソファで寝るなって事?
仕方なく目を開けようてすれば何か放られた。


『うわっ……て、掛け布団…?』

「風邪ひくと面倒だから、有り難くもらうがいいよ。」


そしてパタンとまた部屋に入っていった扉を呆然として見て、やっと現状が理解出来た時には顔が熱くなった。恥ずかしくなった私は掛け布団を頭まで被せた。でもそこで気付く。これフェイタンのじゃん!そう意識した時には布団からフェイタンの匂いがして、フェイタンの匂いが私を包んでいる布団から…


『私は変態かぁあああああ!!!!』

「うるさいと言てるね!ぶちのめされたいか!」

『すみませぇええん…!』


緊張状態な夜でした。


.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ