白兎と冷酷人間
□始まった新しい生活
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『おおおおお邪魔します!』
「何してんだよ。」
『い、いえ…私今思い出したんですけど、前の世界で一度も誰かの家に遊びに行った事なくて…。』
「どんだけ箱入り娘なんだよ。」
『家というものに住んでる人が知り合いには少なかったんです。』
だって私の知り合いなんてみんな宇宙船に住んでるし?ごくわずかに地球人居るけどさ…。
するとノフナガさんまでもが変な表情でこっちをみてきた。
「お前…可哀想な奴だな…。」
『仕方ないじゃないですかー!地球人には知り合いはごくわずかですし…。』
「そいつの家行けば良かったじゃねえか。」
『…だって…家が警察署だったり家がなかったり、フラフラ放浪しててわからないし…泊まれるわくないでぇ!?』
「うるさいね。」
『ちょ…本当に痛いです…。てか今投げたの私の荷物…。』
それを無視してスタスタ自分の家に入っていくフェイタン。投げた荷物はフィンクスさんが持ってくれたからよかったけど、落としたりしたら大惨事だった。
緊張しながら入れば、何とも殺風景な部屋。リビングらしき所はソファにテーブル、冷蔵庫にテレビ。キッチンは…使ってないようだ。
『あれ?食器とかは…?』
「そんなものないに決まてるね。」
『なら私ご飯作れないんですけど…。てか包丁とかは…。』
「ナイフならあるよ。」
『いや違いますから。』
冷蔵庫を見れば、やっぱりビールだけ。え、何?もしかして明日色々買い物しなきゃいけないの?食材に食器に料理器具に…私1人で大丈夫かな…。アジトにあったからって油断してた。
『…とにかく明日買い物に行きます…。』
「そちの部屋使ていいね。」
指差すほうの扉を開ければ、ガランとした部屋。あれ、物置なんじゃ…。
「随分すっきりしたなー。」
『前には何があったんですか?』
「……。フェイタンに聞け。」
パッとフェイタンを見れば、にんまり笑みを浮かべられた。これは絶対に聞いちゃいけない。て事はこの部屋、なんか曰く付き…?
『な、何にも出ませんよね!?何も出ないですよね!?』
「そんなのワタシに聞くんじゃないよ。」
『!!お、お二人共今日は泊まっていきましょうよ!泊まってください!』
「そんなのワタシ許さないね。」
「あー…フェイタンもああ言ってるしな…。」
「悪ぃな…。」
どうしよう。フェイタンの家に住むのもドキドキだったけど、まさか部屋に居る事もドキドキなんて予想外過ぎる。本当にどうしよう。そんな真っ青な表情の私を置いて、ノフナガさんとフィンクスさんは玄関のドアに手をかけている。
「フェイタン、頑張れよ。」
「何を。」
「自分の心に聞いてみろ。」
「………。」
『あの!ほ、本当に帰っちゃうんですか!!』
「正直になれよ、フェイタン。」
「うるさいね…。」
『無視しないでくださぁああああい!!!』
涙目でフィンクスさんに抱きつけば、フェイタンが後ろから引っ張ってきた。足が地面に着いてないから首がしまる…!
しばらくしてパッと手を離されて、咳き込んでいればノフナガさんが心配してくれた。
「明日よぉ、団長とパクが来てくれるみたいだから我慢しろ…。」
『クロロさんは面白がって来る気ですね…!』
くそぅ…酷いよクロロさん。前から酷いけど、本当に酷いよ。そしてついに2人は帰ってしまって、フェイタンと私だけになってしまった。
もう色んな意味で心臓がパニックだ。
『き、今日の夕飯はどうしますか…?』
「寝る。」
『寝る!?食べないんですか!!』
「うるさい。」
『すみません。…あ、じゃあソファ借りてもいいですか…?明後日マチちゃんがベッドくれるみたいで…。』
無言で部屋に入ってしまったフェイタンは、うん肯定とみなそう。黒のソファに横になって部屋をボーっと見る。やっぱり緊張はするし、あの部屋は怖いし…。これからやっていけるのかな。
そっと目をつむりながら考えれば、フェイタンが部屋の扉を開ける音がした。そして何故かソファの前、つまり私の前でピタリと止まった。もしかしてソファで寝るなって事?
仕方なく目を開けようてすれば何か放られた。
『うわっ……て、掛け布団…?』
「風邪ひくと面倒だから、有り難くもらうがいいよ。」
そしてパタンとまた部屋に入っていった扉を呆然として見て、やっと現状が理解出来た時には顔が熱くなった。恥ずかしくなった私は掛け布団を頭まで被せた。でもそこで気付く。これフェイタンのじゃん!そう意識した時には布団からフェイタンの匂いがして、フェイタンの匂いが私を包んでいる布団から…
『私は変態かぁあああああ!!!!』
「うるさいと言てるね!ぶちのめされたいか!」
『すみませぇええん…!』
緊張状態な夜でした。
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