白兎と冷酷人間
□最善のお別れ
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『ここは…どこだ…。』
いや、本当にここはどこなんだ。え?だってこんなフカフカなドデカいベッドも綺麗な天井も今まで生きてきたなかで全く記憶にないんですが!
これがいわゆる天国なの?てか私って天国に行けたんだ…。
「や。」
『あれ?何で?天国のはずなのに知り合いに会っちゃったヒイッ!!』
「俺まだ死んでないんだけど。」
私の顔スレスレに刺さっている武器は間違いなく今投げた人物の物。つまり私は死んでないのか。
『あのイルミさん…何で私はこんな所に居るんでしょうか…?』
「あぁ、ここ俺の家だから。」
『…え?イルミさんの家?』
「うん。」
なん…だと…?イルミさんの家?あれ?イルミさんって家族と住んでるんだよね?じゃあこんな部屋が何部屋もあるの?
いやいやそんな事よりも!
『何で私がイルミさんの家に!?』
「うるさい。」
『ごめんなさい。』
「ハァ…。クロロ達が連れてきたんだよ。なんか猛毒がルカの身体の中に入ってるし、あんな場所じゃ不衛生だからだって。」
呆れながらも話してくれる内容に私はポカンとする。たぶん猛毒は兄の傘に仕込んであるやつだろう。兄は確か拷問癖が少しあったから。
「何アホ面してんの。」
『彼らにそんな気遣いが出来たとは…。』
「結構失礼な奴だったんだね。」
いや、正論だと思いますけど?わざわざ自分からケンカふっかけといて、こっちが怪我しても放置状態ですから。そんな事毎日されてたら、ねえ…?
「そういえばさ、黒兎ってルカの兄貴だったんだってね。」
『あ、はい。……そういえば兄は…?』
確かに兄は倒したはずだ。でも殺してはいない。ならばどうなったんだろう。
…クロロさん達が殺したのかな…。
「ルカもう身体は平気?」
『ちょ、無視ですか。…身体は…まあ少し痛むくらいで平気ですよ。』
「本当に化け物みたいだね。」
『ば、化け物…。』
「まあそのほうが俺達としては気を使わなくて済むけど。」
聞き返そうとしたらヒョイと担がれ、何故か部屋の窓を開けるイルミさん。うわ、景色すご。山すご。木すご。なんか遠くでデカい白いのがうごめいてるけど、なにあれ動物?
『ちょっとイルミさん、何で窓に足かけてるんですか。』
「今からクロロの所に送ってあげるからだよ。感謝してよね。」
『あ、ありがとうございます。…て!待って!これ窓!扉あっち!』
「うるさいよ。あ、舌噛み切って死なないでよ。」
『ちょ、まっ…!』
落下していくイルミさんに私は悲鳴すら出ない。え?マジ何なんだ。高速で変わっていく景色に私の目は半端なく酷使される。そしてグワリと浮上する感覚に頭の中はシャッフルだ。
スタンという着地した音に私は床におろされた。
『う…うぇ…。』
「吐いたら落とすからね。」
『いきなり過ぎですよ…。てか落とすって…。』
「地面に決まってるでしょ。」
何かの乗り物からイルミさんが指差す先を窓から見れば小さな家々。わー、ミチチュアハウスだー…なわけない。なんか段々と浮上していくにつれて地面が遠くなっていく。今落とされたら…グシャリだ。
『死んでも吐きません。』
「死ぬんだったらクロロに会ってからにしてね。処理するの面倒だし。」
サラリと言われた言葉に少し涙が出た私は悪くないと思う。落ち込んでいると、イルミさんはどこからか毛布を持ってきて私に被せてきた。
「まだ時間かかるから寝てなよ。」
『あの…どこで…』
「これ自家用だから好きなとこで寝ていいよ。」
イルミさんの言葉にはつくづく驚く事ばかりだ。世の中、お金持ちでも色々居る事を知った日でした。
『なら…ここのソファー貸してもらいます。』
「…ソファーでいいの?」
『はい、ソファーに毛布まで貸してもらえたんですから。』
「……変な奴。」
『なんかすみません。…ではおやすみなさい。』
やっぱりフカフカのソファーに横になれば直ぐに眠りにつく事が出来た。頭を撫でられている気がして頬が緩んだ気がした。
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