ちゃいるど!!
□日本と私
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ヒラヒラと舞う花びらにその花びらが地面に落ち、桃色一色になったこの景色。
『綺麗…。』
「だよな。桜っていうのはジャポンにしかない。だからこれを見に来る奴で春は大賑わいだ。」
『なるほどね…。』
どうりで人が多いわけだ。だがこのジャポンという国は服装以外は私の世界みたいに近代化してるわけでもなく、江戸時代のような色々とお店が立ち並んでいる。さながらここは商店街というところか。
『帰る時にここ辺りのお店見てもいいですか?』
「ああ、いいぜ。」
『なら、早く仕事済ませましょう。』
早く終わらせてこの辺りを探索したい私は、久々に意気込んでいればジンは頬をかきながら視線を泳がせた。
『…まさか…このジャポンのどこかに居るとかぬかすんじゃないですよね…。』
「いや、流石にそれはねーんだけどよ…。あれ…」
指差した方を見れば、人が行き交うこの賑わった場所でも見える程の高い山。嫌な予感がすごくする。
「あの山のどこかに居るはずだ。」
『一匹?』
「いや、1人。」
『…人間だったんですか…。連絡手段は?』
「あるけどよー…、山の中にある、そいつの家しか電波通ってねえ。」
『まさか家になかなか帰らないとか言うですか。』
無言になったジンを見て、目眩がするほど嫌になった。類は友を呼ぶ、と言うがまさにそうだと思う。
「だけどよ、あの山には忍や獰猛な獣も居る。それに人が出入りするわけでもねえから、かなりの獣道だ。」
『そうですか。…つまり鍛錬にはちょうどいいという事ですね?』
「ああ、奴を探しながら出来るし、一石二鳥だろ?」
それはジンだけだろう。私には全く関係ないのだから、別に一石二鳥にはならない。いや、でもジンが仕事が終わらない限り私は町を散策出来ない。やっぱり一石二鳥なのだろうか。
「とりあえず行くぜ。忍の里にはくれぐれも近づくなよ?後が面倒だしよ。」
『好きで面倒事には首を突っ込まないのでご安心を。ここから走っていくんですか?』
「そのほうが早ぇだろ?」
確かに、と返事をした私はジンの後を追うように走る。周りの景色がかなりの早さで変わっていくところから、この2週間で少しは成長した事がわかる。だけどまだだ。まだ蜘蛛のみんなのように速くもない。今、ジンだって私が着いて来れるスピードに合わせてくれてる。私はまだもっと強くならなければ。
山の麓に来ればかなり大きさものだとわかり、ここからたった1人を探すのかと思えば、自然に溜め息がこぼれる。キャンプセットを少し補充する為に買って、すぐに山の中へ入っていく。
「おーい、大丈夫か?」
『まだ大丈夫です。』
「やっぱりユナは根性あるな。」
人間の手がつけていないとこんなにも山というのは登りにくいのか。
急斜面なこの山は、気を抜けば下に転がり落ちるか地面に足をとられてしまう。そして大きな岩は行く手を阻むようにあり、密集している木々からは先ほどから鋭い視線が刺さってくる。周りに目を向けながらこの山を登るのは、かなり心身共に疲労する。これはかなりの鍛錬になるだろう。
少し先では汗を流すどころか息1つ乱れていないジン。あの野生人間め。
「もう少ししたところに川があるから、そこで今日は寝よう。」
『…なんで川があるのを知ってるんですか?』
「音だ。」
音?目をつむって神経を集中させるがそんなもの聞こえてきやしない。この男、人間の域を遥かに超えて動物に近いんじゃないか。薄々気付いていたが、今の発言で確信した。
『とにかく汗を流したいです…。』
「そんな余裕な発言出来んだからまだ大丈夫だな。」
どこが大丈夫なんて言えるんだ。この汗と疲労を見てそんな笑顔で言われたって、私は笑顔で返事なんかしてやらない。まず返事をする体力すら惜しいくらいなんだ。
ヒョイヒョイとまるで猿のように登っていくジンに内心悪態をつきながら進んでいけば、段々と聞こえてくる水の音に重くなった足が少し軽くなった。そして大きな岩を飛び越えた先には、キラキラ光が反射している川。私は川に腕を突っ込み、暑くなった身体を冷ましていく。そして顔を洗えば、ベッタリとついていた汗が流れて気持ちがいい。
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