ちゃいるど!!
□日本と私
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『気持ちいい…。』
「途中でへばると思ってたけどまさかここまで登ってくるとはな。」
『へばった場合どうするんですか。』
「おぶってやる。」
『足が動かなくなっても絶対にへばりません。』
「ひでえな」なんて言いながら笑ってるけど、絶対にそんなの嫌に決まってる。羞恥心よりも私のプライドがズタボロになりそうだ。
そんな事を思いながらも身体中についている汗はやっぱり気持ち悪い。仕方なく上着を脱いで服のまま川の中へ入れば、汗も流れてスッキリする。
『私は…強くならなきゃいけないんです…。』
「あー…会いたい奴らの為にか?」
『はい…。まだ私の力じゃ無理…。それに…』
チラリと見た左腕は動く事は動くが、まだどこかぎこちなくて私の気持ちを焦らせる。
「左腕は普通の生活には支障はきたさねえよ。それに戦闘だってそこら辺の念使いよりは全然強い。体術も申し分ないしな。」
『そこら辺じゃ…彼らは助けられないんです…。』
由宇が言っていた事が去年の事だったら?もし今年だったら?どちらにせよ、早く、早くみんなに、クロロに会わないと…。
「とにかくよ、今は強くなるんだろ?先の事考えたって意味ないぜ?」
『そうですね…。』
「よし!じゃあ今日は岩を吊しながらその下で寝てみろ!」
『この間やったじゃないですか…。嫌ですよ、ジンあなたが持ってくる岩、寝てる途中に何故か粉砕するんですから。』
「岩が脆いんだろ。」
『あなたが馬鹿力なんですって。』
「なら自分で持ってこいよ。」
『…能力使っても?』
「ああ、いいぜ。」
今鍛錬中の私はジンの許可がなければ念能力の使用は禁止になっている。ジン曰わく、私の能力は便利だからだそうだ。そして更に能力の1つ1つにも名前を付けた。名前を付けると精度が上がるから付けたというのに、嘘とぬかした時は本当に殺意が湧いた。
『【収縮されし世界】コントラクション。』
近くにあった岩に触り呟けば、小さな黒い球体になり、その球体を手のひらにのせる。
『【隔離されし世界】ストアー。』
すると球体は身体の中へ入っていく。この能力はこの間思い付いたものだ。【収縮されし世界】の発動時しか出来ないし、最大5つしか出来ないのか難点だけども…。
「本当にお前の能力って便利だよなぁ…。」
『だけど能力発動時は左腕はピクリとも動かないですよ。』
「でもいいじゃねえか。」
ニカリと笑うジンに呆れながらも、ジンの分の岩も能力で小さくして収納する。
そしてジンの目の前で嫌がらせのように岩を出せば、かなり驚いた表情をするのでせせら笑いをしてやった。
「お前って本当にいい性格してるよな…。そんなんじゃ好きな男に好かれ『【記憶への場所】ムーブ。』のわっ!?」
ジンの岩に触りながら言えば、ジンの頭の上へ移動する岩に間一髪で避けられた。
「お、怒んなって!俺が悪かった!」
『…最初から叶わないなんてわかりきってますよ…。』
「なんでだよ。」
『だって彼は…私をきっと気まぐれで拾って、たまたま気に入った子供としか思ってないですよ。』
全部偶然で、その偶然がうまく重なってクロロとあんなに仲良くなれて、みんなにも可愛がってもらえたんだ。今度会う時は分からない。時の流れという必然なものが私を忘れ去っているかもしれないんだ。
困ったように笑えば、ジンは機嫌悪そうな表情で私をジッと見てくる。
「でもユナはそいつに会いたいんだろ?ならそんな気持ちにさせるような奴だって、何かしら思ってんだろ。」
『でも…』
「お前は難しい事考え過ぎなんだよ。」
ズカズカ近付いてきたジンは乱暴に私の頭を撫でられる。撫でられるなんて彼らぶりだ。久しぶりの感触にブワリと感情が押し寄せる。
「会いたいなら会いに行けばいんだよ。強くなりたいなら鍛錬すればいいんだ。色々考えれば沢山あるだろうけどよ、そんなの考え切れるわけないんだぜ?」
『っ…はい…。』
「自分の気持ちを隠す事はねえだろ。お前は色々と考え過ぎで頑張り過ぎだ。もう少し余裕をもて。」
『はい…!』
俯いた顔からポロポロ落ちる涙にジンは何も言わずにずっと頭を撫でてくれた。
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