ちゃいるど!!

□決意と私
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「キミから電話してくるなんて珍しいね

『究極の選択でしたよ。…単刀直入に言います。ディオンはもうあなた以外を操っています。しかも記憶改ざんという手で。』

「…へぇで、ユナ、キミはどうするのかな?」

『時間がない。…私はディオンを殺します。』


そして蜘蛛を守るんだ。キュッと唇を噛む私に、電話越しからヒソカさんの楽しそうな笑い声が響く。


「やっぱりキミはいいよゾクゾクする

『…ヒソカさんの感性は知りませんが、ヒソカさんはどうするんですか?』

「僕は気分屋だからわからない

『それなら嘘つきもでしょう?楽しんでいるあなたが何も企んでいないわけない。』


すると少しの沈黙の後にまた笑い声が聞こえてくる。たぶんどんなに聞いても本当の事を教えてくれないだろう。彼はきっと楽しみは横取りされたくない性格だろうから。
仕方ないから忠告だけしよう。


『私のする事に邪魔しなければ構いません。』

「それは本当かい?

『はい、でも私の言葉の意味、ちゃんと理解して考えてくださいね。』

「わかってるよ

『それじゃあまた。』


電話を切って、天井を見つめる。まずディオンを1人にしなければならない。それなら今日しかない。
今日はノブナガさんとフェイタンさん、そしてクロロが夜から仕事に行く。そしてシャルさんとフィンクスさんは昨日の毒で寝てるし、ウボォーさんとフランクリンさんは昨日の自分の不甲斐なさに苛ついてどこか出掛けている。つまり昨日仕事に行った人はかなり不機嫌なんだ。
そして、今はみんな警戒心も強い。だけど今しかないんだ。幸い、ディオンはアジトに居る。


『今夜、しかない。』


でも私は本当に人が殺せるのだろうか?現に2人殺しているけど、その時自分はあまりにも精神的に追い詰められていた。もしかしたらディオンを殺さずに助かる方法があるかもしれない。いや、そんな生易しい考えでどうにかなる相手じゃない。
ぐるぐる回る思考に何だか気分が悪い。仕方なくあまり使われていないキッチンに向かえば、ちょうどプリンを持ったクロロに出くわした。


『おはよ、体調はどう?』

「あぁ、大丈夫だ。体調よりもあまり気分が優れないな。…すまなかったな。」

『気にしないで。』


すると「プリン食べるか」なんて珍しいお誘いがあったので、是非そうさせてもらう事にした。…冷蔵庫の中が酒とプリンばかりだったのは見なかった事にしよう。


『ねえ、クロロ。もし旅団の誰かが死んだらどう思う?』

「前も言った通り、ただ替えを探すだけだ。」

『なら団長としてではなく、クロロ本人としては?』


「俺本人?」と聞き返すクロロの顔を見ながら頷けば、困ったような表情で笑ってくる。


「そうだな、そいつのしたい事をやってやるかな。」

『そっか。なら私のしたい事はね、みんなとご飯食べたりのんびりしたいな。あと、クロロのそばに居たい。』

「…それはお前が居なければ叶わないんじゃないか?」

『そうだね。』


笑みを作りながら言えば、クロロは笑いながらも頭を撫でてくれた。クロロのお願いは何だろうか?まずこの人はそう簡単に死ななさそうだから、聞いても無駄な気がする。何時の間にかフッと居なくなって何時の間にか死んでいそうな感じだ。


『ねぇ、クロロ自身は今の旅団員の事、大事?』

「まあ大事なんだろうな。今日はやけに質問が多いな。」

『なんとなく思っただけ。あ、今度プリン作ってあげるね。』

「…作れるのか?」

『…失礼だね。クロロが何回でも食べたいと思えるやつ作ってあげるよ。』

「ほう…なら期待している。」


こうやって他愛ない会話をしてるだけで幸せなんだ。この幸せを守る為とに、私は自分の生ぬるい思考を叩き直すように自分に言い聞かせた。


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